3月のライオン(夢)
□隈倉2
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「えーと、レジン液十本に、粘土2キロ。あ、ルビーとサファイアが切れそうなんだった」
必要な物を買うためにデパート、アーケードを練り歩く。
そして、ふとケーキ屋が目に入った。
「ここのケーキ、食べた事なかったかも」
誘われるまま中へ入り、休憩と称してお茶とケーキを頼む。
時間的にはかなり遅いが、問題無いだろう。
「お待たせしました」
「わ〜っ、すいません。写真とってもいいですか?」
「はい、構いませんよ」
「ありがとうございます」
出されたケーキの写真を撮り、ファークで一口食べてみる。
(ん〜!オレンジのいい香り)
生ですりおろしているのかな、乾燥させているのかなと、他には何を使っているのか想像を膨らませながらゆっくり食べて行った。
「お、隈。お前あーいうの好きだろ。買ってくか?」
神宮寺会長が指差す方を向けばケーキ屋があった。
確かあそこはシフォンケーキが美味かったと思い出していれば、窓際の席に見覚えのある顔が座っていた。
「・・・いえ。今日は良いです」
つい二日程前、握手を求めてきた人物。
その人物が今、ものすごく幸せそうな顔をしてシフォンケーキを食べている。
そう言えば、出会った場所もケーキ屋だったなと思い表情が緩みそうになった。
実際は何一つ変わらなかったが。
「ま、そうだな。これから飲みに行くのに今買ったら悪くなっちまう」
「行くんですか、飲みに」
「当たり前だ!他の奴らは朔ちゃんが連れて来るからな、店で合流するぞ!」
「・・・わかりました」
この人の勝手は今に始まった事じゃない。ため息交じりに歩き出す。
踵を返す視界の端で、幸せそうにケーキを食べている客につられ、一人二人と通行人が店へ入って行くのが見えた。