3月のライオン(夢)

□藤本17
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最近、雷堂くんの元気がない。

なんでも、結婚する事を話したら先輩たちが大騒ぎし出して会館に顔を出す度絡まれるのだという。

「あの、大丈夫ですか?」
「・・・ああ」

昨日も飲み屋をはしごさせられたらしく、とても顔色が優れない。

「えっと、それで、明日はみんながお祝いしてくれるそうで」

出かけてきますねと言えば、頷きながら額に手をあてる。

「俺も出かける。気にするな」
「・・・はい」

また飲みにつれて行かれるんだなと、明日の朝食は体に優しい物にしようと思いました。


「和子くんの結婚を祝して!」
「「かんぱーい!!」」

音頭を取った部長に、来てくれたみんなにお酌して回る。そんな私に、

「今日は和子ちゃんが主役なんだから、お酌なんかしないで飲みなさい」
「先輩」

「ほら」
「ありがとうございます」

手渡されたグラスを受け取り、先輩のグラスと軽く合わせて口を付ける。

「それにしても、将棋を打つのが仕事の人を選ぶとはね。棋士だっけ」
「はい」

「どこがよかったの?この前テレビで見たけど、なんかめんどくさそうじゃない?」

その言葉に笑ってしまう。

確かに、勝ったり負けたりで彼の機嫌が左右される事はよくある。

けれど、それを面倒だと思った事はない。

「どこと言われると困ってしまうんですが、」

中学生の時から変わらない真剣な目。怒っているのかと思ってしまう顔。

昔から目が合う事が多かった。

あの真剣な目を見ても、怖いとは思わなかった。

高校生になってからは、その真剣な顔を正面から見るようになった。毎日、盤を挟んで少ない会話をした。付き合ってはいない。

二人だけでいても、やっぱりドキドキとかはしなかった。
ただ、男の子だなぁと思ったり、可愛いなぁと思ったり、家族以外の人に初めて向く感情はあった。

そして、あの答え。

『私と結婚したいって、思うんですか?』
『お前以外とする気がない』

胸が苦しくなる程切なくなったり、息ができない程ときめいたり、そういう気持ちは無かった。

けれど、家族になるなら、

「この人が良いと思ったんです」
「・・・そう」

「はい」

みんなの言う恋が分からないけれど、この穏やかな気持ちは彼にしか感じないと、思う。

先輩とゆっくり飲んでいると、後輩の男の子が赤い顔で部屋に駆け込んできた。

「外!外!!」

お酒が入って箍(たが)が外れている今、後輩の口から告げられた情報は素晴らしくみんなの好奇心を刺激した。

「あのテレビに映ってた人たちが!」
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