3月のライオン(夢)
□藤本14
1ページ/1ページ
あれから二年。雷堂くんはB2で停滞していた。
私からすると停滞とは言わないような気がしているけれど、雷堂くんは気にしているようだった。
というか、学校に行かなくなった分の時間を全部将棋につぎ込んでいるだけに、負けた時が苦しそうだった。
「・・・」
疲れた寝顔を見て思う。
横向きで寝ている雷堂くんの背中に抱きついて、目を閉じる。
「大丈夫ですよ」
将棋は勉強した分だけ強くなる。それは身に染みて分かっている事だった。
雷堂くんがどれだけ勉強しているのか、私は知っている。
「あなたはちゃんと前に進んでます」
停滞なんかしていない。勝っても負けても、嬉しくても苦しくても、将棋の駒から、盤から目を反らさない。
怒っているのかと思う程怖い顔で、真剣に見つめ続けている。
「指したくなったら言ってください」
「・・・」
「ね」
お腹に回していた手を、雷堂くんの大きな手で包まれた。