3月のライオン(夢)
□藤本13
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「和子さん、仕事には慣れましたか」
「はい、職場の雰囲気も、上司の方にも良くして頂いています」
食事中、あの父さんから和子に話を振っていた。本当に気に入っているらしい。
「お父さんったら娘が出来たのが嬉しくて仕方ないのよ」
うちは全員男で、おまけにみんな体も大きくなって可愛いからはかけ離れちゃったからと、ため息を吐く。
「やっぱりそうなんですかねぇ」
そんな母さんの言葉に、和子が返した。
「和也もまた背が伸びたみたいで、もう見下ろされてるんです」
昔はあんなに小さくて可愛かったのにと、俺はクソ生意気なガキを思い出す。
「あれの何が可愛かったんだ」
「可愛かったんですよ、“お姉ちゃん”って私の後ろを追って来て」
いつの間にか声も低くなってお姉ちゃんとは呼んでくれなくなりましたけどと笑う。
「雷堂さんだって、雲我くんの事を可愛いと思うでしょ?」
「思ってたまるか」
「思われたくない」
二人そろって言えば、風兄が笑い出す。
「俺は和子ちゃんの気持ち分かるけどね」
「俺は弟よりも妹の方が良いな」
「水明、やめなさい」
「ヘイヘイ」
和子の肩を抱こうとした水兄を父さんが止めた。よく何度も同じことができるなと思っていれば、
「お代わりはどうしますか?」
横から手が伸びて来たので、その手に空の茶碗を乗せる。
「和子さんがいると会話が増えていいわぁ」
「いいえ!そんなっ」
焦りながらもちゃんと飯をよそって手渡された。