3月のライオン(夢)

□藤本7
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「どうよ高校生活は!キレイなお姉さまたちに囲まれるライフは!」
「囲まれてません」

いつものように絡んできた神宮寺さんに無表情で返す。

「お前プロだもんなー!金持ってるって知れたらわんさか寄ってくるだろ!」
「寄ってきません」

「徳ちゃん、その辺にしといてやんなよ」

若者のそういう事情聞きたくなるのも分かるけどよと、やって来た柳原さんが止めてくれた。

「かー!未成年が金持ってたってしょうがねぇだろ!」

よし!飲みに行くぞ!と肩に腕を回され、ズルズルと引きずられる。

「明日が休みでよかったな」
「何一つ良い事なんてありませんよ」

引きずられる俺を見て笑っている柳原さんにも、舌打ちしたくなった。



「雷堂くん、もしかして疲れてます?」

静かな場所を探し、図書室の奥で突っ伏していたら声をかけられた。

「、和子か」
「私図書委員で、今日は当番だったんです」

「そうか」

額に手を置き、しょぼつく目を覆う様に擦る。

「徹夜ですか?」
「いや、違う」

奨励会の先輩たちに連日連れ回されて疲れてるだけだと答え、顔を上げると少し驚いたらしい和子がいた。

「雷堂くんでも逆らえない人っているんですね」
「当たり前だろ」

こっちはまだプロになったばかりの新人で、向こうは名人にもなっている大先輩。

眉を寄せれば、笑った顔のままスカートのポケットに手を入れた。

「飴は好きですか?」

キャラメルとどっちがいいと、手のひらに乗せたそれを差し出してくる。

「・・・両方」
「はい」
「いいのか?」
「鞄にまだ入ってますから」

どうぞと差し出されたそれを受け取れば、

「でも、図書室で食べちゃダメですよ」

ここは飲食禁止なのでと、受付カウンターにつながっている扉を開け、小窓の前に座ると手を振って来た。

他には誰もいないここは、静かで居心地がいい。もう少し寝ようと、また机に突っ伏した。
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