3月のライオン(夢)

□藤本6
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教室の空気が軽くなった。みんなを苦しめていた受験が終わったからだ。

それでも、雷堂くんが怖い顔で将棋の本を睨むのは変わらなかった。

「高校は和子と別々かぁ」
「どうして駒橋高校受けなかったの?」

和子なら余裕なのにと言われ、苦笑が漏れる。

「池元の方が家から近いから」
「そーだけどさー」

「池元も頭いいけど、制服が可愛くないじゃん!」

やっぱりセーラーよりブレザーが良いよと、制服の可愛い所について話す友達に笑っていれば、雷堂くんと一瞬だけ目が合った。

修学旅行の時のように、目が合った理由が分からない。

今、雷堂くんは順調に勝ち進んでいるらしく、もしかしたら来年にはプロになれるかもしれないと聞いた。

“プロになって満足するような奴らと一緒にするな”

あの言葉と、怒っているのかと思う程真剣に本を睨んでいる眼。

彼の本気が伝わって来て、心から応援したくなる。

「雷堂!お前いつなら空いてる?」
「今度俺の家でパーティーしようぜ!」

卒業したら俺たちバラバラだからなと、雷堂くんを囲んで話し出す男子たち。

「お前も谷ヶ丘にすればよかったのによ」
「どうせあれだろ?池元選んだ理由だって会館が近いからとかだろ?」

そのセリフが聞こえてきて、顔を上げた。
一瞬だけ、雷堂くんと目が合った。

「部活とかやんねーの?」
「将棋部なら考えるが、池元にはないからな」

学校が終われば家に帰るか会館に行くと、今と変わらない生活を続けるらしい雷堂くんに、彼女できねぇぞとからかう男子たち。

私は嬉しくなった。急に高校へ行くのが楽しみになった。
入学式が待ち遠しい。
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