短編集2(夢)
□グリンパーチ3
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今回の任務は結構楽しかった。
グルメ界と人間界の境にある食材。
レベルが高い食材であればあるほど手ごたえのある奴らが出て来る。おまけに吸っても美味い。
それに、調度いいペットも手に入った。最高だ。
機嫌よく部屋に向かうと中から人の気配がする。
扉を開ける手を止めた時、任務へ行く前のことを思い出した。
そうだった。今日の”食事”はまだ終わっていなかった。
ニタァッと薄気味悪い笑みを浮かべてノブへ手を伸ばした。
食べ物、食べ物っ、なにか、なにかっ!!!
部屋をキョロリと見回せば、ベッドに横たわっている青白い女がいた。女と言っても、ガリガリに痩せていて骨に皮がついているだけの状態に近かった。
吸ってもあまり美味く無さそうだなと思いながら近づけば、今までピクリとも動かなかった女のまぶたが開きギョロリと眼球が動いた。
「お」
死んではいなかったようだと思っていれば、間接が浮き上がっている細い腕で襲いかかってきた。
しかし、グリンパーチはその攻撃を避けることはしなかった。
一応アルファロに様子を見るようにも言われているし、何よりこんなに弱っていてはこの体に傷一つつけることはできないだろう。
身動きせずに女を見ていると腕に口を当ててきた。
やはり人肉を狙っていたのか。
ならばこのまま吸ってしまっても問題はないだろう。
だが、
「あ?」
女は腕に噛みつく訳でもなく、腕の一点をなめ続けている。よくよく見てみると、そこには小さな傷ができていた。
女に触られてから痛みを感じていない。
では、今日の任務でついた傷ということだろう。
傷を一心不乱に舐めているのを見ていれば、腕の傷はもういいのか胸に爪をたて始めた。獣のように爪でひっかく。
その力強さに、普通の人間ならば肉が裂けているのだろうが、如何せんグリンパーチは普通ではなかった。
傷一つつかないそこに涙を流しながら掻き毟り、女の爪がイカれてしまうと思われた時、
「クックック、そういうことか」
低く笑ったグリンパーチはおもむろに手を持ち上げた。
ブシュッと飛び散る血。
「おら、足りなかったらまた作ってやるからたらふく食えや」
グチャリと耳障りな音を上げながら、自らの胸に突き刺していた手を引き抜いた。
唖然として見ていれば、
「あ?お前人の傷を食うんじゃねぇのか?」
それとも血だったか?と、赤黒く光る手を見せてきた。
その後はもう、無我夢中で目の前にいる男にしがみついた。
こいつが胸の傷を食っているのをじっとみながら、下半身に熱が集まっていくのを感じていた。
胸の傷を食い終わってもまだ足りなそうだったから、腕にも新しく傷を作ってやったら泣きながら舌を這わせて、いい顔をする。
体中に傷をつけて、体中を舐められる。
しばらくすると女は満足したのか大人しくなった。
おまけに、よく見りゃ細胞のレベルまで上がってやがる。
満腹になった事への幸福感か、恍惚とした顔でこちらを見ていた。
その表情を見て、ごく自然な動きで女を組み敷いた。
抱いている時に気が付いたが、こいつは声が出ないらしい。
だが、荒くなる息使いとこちらを見てくる目だけで十分興奮できた。