短編集2(夢)
□ブランチ2
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私を助けてくれた人は、ブランチというらしい。
「ブランチ」
呼んだら、
「なんや」
こっちを振り返って返事をしてくれる。嬉しくて嬉しくてしかたがない。すぐに人型になって抱き着こうとすれば、
「せやから!人型になる時は服着ろ言うたやろ!!」
慌てて近くに置いてあった服をかけられた。
全裸で抱き着いてきたので慌てて服をかけたが、女は尚も嬉しそうに腰に抱き着いてくる。もう本当に、男としてどうにかなってしまいそうだ。
「ワレ、あー、ホンマに名前無いと不便やのぉ」
今までこんな事で悩んだことはないと頭をかいて、自分に抱き着いて来ている白い女を見下ろした。
絹のような真っ白の艶やかな髪。陶器のような滑らかで透明な白い肌。そして、真っ赤な赤い目。
見つめられて、ドキリとする。
心臓が変な動きをする。まずいと眼を閉じて、顔を反らした。
「どうしたの?」
下から声がしたと思ったら、
「すごい音してる」
背伸びをして胸に耳を押し当ててきた。勘弁してくれ。
突然口に触れた温かくて柔らかいもの。目の前は赤い色と、微かに揺れている銀しか見えない。
ゆっくりと離れていく赤を見ていたら、それはブランチの顔だった。
「、」
今、何をされたいのか分からない。分からないが、顔が熱くなっていくのは分かる。
「ブランチ?」
呼んだら、返事をする変わりに抱きしめられた。あったかい。
「忘れろ」
言われて、なんでか悲しくなった。森で一人でいた時みたいな悲しさじゃなくて、でも悲しい気持ち。なぜだか分からないうちに涙が流れていく。
ここはブランチの腕の中で、すごく暖かいのに悲しくなる。だから、ブランチの背中に腕を回してもっときつく抱き着いた。