短編集2(夢)

□ブランチ
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私は生れつきみんなと違っていた。

みんなは羽根が二枚しかないのに、私は四枚。そして、みんなは黒いのに私だけ真っ白。どうしてだろう。でも、一番分からないのは、その違いのせいでみんなに攻撃されること。

(痛い)

みんなが虐めるから、私はいつも一人で群れの一番後をついていく。話す相手も、見つけたご飯を分けてくれる相手もいない。

ある日、いつもみたいにみんなが食べ終わった後の残骸を突いていると、突然大きな猛獣が現れた。もちろん逃げようとしたけど、

(え、)

周りには誰もいなくて、むしろ、みんながいなくなって少し時間が経っている事が分かった。だって羽根ばたく音も、抜け落ちた羽根も無いから。もしかしたら、私は囮にされるために置いて行かれたのかもしれない。私は、もうみんなの後を追うことも許されないらしい。

グシャリと、嫌な音がした。見れば、私が赤くなっていた。それも変な形をして。

私はもう、みんなを追うことも、あの青い空を飛ぶことも、叶わない。

(一人で生きて行けって言ってくれたら、出ていったのに)

私はただ、そこで生まれたからそこにいただけで、みんなにそれほど強い執着は無かった。だって、毎日攻撃されて、痛い思いしかしてこなかったし。

目の前が歪んでいく。

(執着は、してなかったけど・・・)

でも、どこかで期待はしてた。もしかしたら、みんなと仲良く出来るんじゃないかなって思ってた。優しくされたかった。目の前には自分と同じ姿をした仲間がいるのに、その中に私は入ることが出来なくて、

(もう、いいや)

このまま眼を閉じれば、きっとこの獣が私を食べてくれるから。もう、終わるんだ。

優しくされたいって思う事も、仲間に入れて欲しいって思うことも、一人でいるのが悲しいって思う事もなくなる。
迫ってきた猛獣を見上げようとしたその時、

「オッシャー!!今日の晩飯じゃー!!」

大きな声を上げながら、大きな猛獣を吹っ飛ばす真っ赤な顔をした男。気絶している獣の上に乗って嬉しそうに笑っている。そんな男を見上げていると、

「あ?」

眼があった。首を傾げて獣の上から下り、こっちに近づいて来る。

(眼も、霞んできた)

確実に死が近づいて来ている。眼を閉じれば暖かい物に包まれた。

「こいつに食われる所やったんか」

さっきよりも近くで聞こえてきた声に、赤い顔をした男に触れられているのだと分かった。

(あったかい)

誰かに触れられるのなんか初めて。こんなに暖かいのなんか初めて。ああ、私、今までで一番幸せかもしれない。死ぬ前にこんな気持ちになれるなんて、

(嬉しい)

そこから先を覚えていない。多分、気を失ったんだと思う。
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