3月のライオン(夢)
□藤本7
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高校に入学し、対局にも勝ち続け、俺は高一でプロになった。
「えー、和子ちゃん部活に入らないの?」
「うん。家の手伝いとかあるし」
廊下ですれ違う時、そんな会話が聞こえてきた。
「そんな事言ってると彼氏できないよ?」
野球部とかサッカー部とか、ラグビー部のマネージャーは?と人気の高い部活を上げる女子。
「ルールもちゃんと分かってないのに、マネージャーなんてできないよ」
だから私には無理と、断りながら歩いて行く。
「彼氏欲しくないの?」
かろうじて聞こえてきたその質問に、和子が何と返したのかは分からない。
「彼氏欲しくないの?」
この質問に、少し後ろを振り返る。さっきすれ違った雷堂くんはもう遠くにいて、聞こえていない事に安堵した。
「欲しくない訳じゃないけど、」
怒っているのかと思う程真剣な横顔。
「無理に作らなくてもいいかな」
あんなに一生懸命、何かにひた向きになれる人も早々いるもんじゃない。
そう返せば、隣から不服そうな声が上がった。
「もっと青春しようよ〜!」
恋バナとかさー!と肩をゆすられ苦笑する。
「気になる人でもいるの?」
「あたり前じゃん!野球部の大内先輩とか最高でしょ?!」
大内先輩と言うのは、入学した時からみんなに注目されている学校のアイドルのような人だ。
「じゃぁ、野球部のマネージャーになるの?」
「もちろん!ライバルがいっぱいだから少しでも近づいてアピールしなきゃ!」
「頑張ってね」
言えば、少しの間を置いて顔を覗きこまれた。
「和子ちゃんは、大内先輩の事好きじゃないの?」
カッコいいからみんな狙ってるのにと、不思議そうに聞いてくる。
「カッコいいとは思うけど、」
『俺も目標はプロになる事じゃない。名人になる事だ』
「好きだとは思わないかなぁ」
「ふーん。和子ちゃんのタイプってどんな人?」
「ん〜」
どんな人と聞かれているのに、頭に浮かんでいるのは一人。
「真っ直ぐな人」
我が強くて敵を作りやすいのに嫌われない。そんな人。