ハリー・ポッター(夢)

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二人はにらみ合って杖を構え、振り下ろす。
だけどヴォルデモートが狙ったのはダンブルドアではなかった。

燃え上がる獅子。
宙に浮いたその人の姿を見て、みんなが叫んだ。

「蘭樹!!」
「そうか、お前の名前はランジュというんだったな」

「てめっ、」
「ああ、今は何もしない。その手を下ろせ」

杖を取り上げたその手で、逆さ吊りになっている蘭樹の顔に近づいて行く。
何が楽しいのか、その顔は終始笑顔だった。

「自己紹介をしよう、俺様の名はヴォルデモート。お前の名は?」
「知ってんじゃねぇのかよ」

「一応初対面なんだ、礼儀だろ?」
「・・・木元 蘭樹。蘭樹がファーストネームだ」

「ああ、ランジュ。ランジュ、意味はあるのか?」
「蘭っつー花からもらってる」

「花、そうか。花か」

ヴォルデモートの様子は変だった。
まるで宝物でも見つけたみたいに、蘭樹を傷つけるそぶりも見せずに話しかける。
そして答えてもらうたびに触れたいのを我慢している様に手を動かして、触れないまま戻す。

「俺は答えたぜ、次はお前の番だ」
「何か聞きたい事でも?」

首を傾げ、蘭樹の目を覗くように近づける。

「下手な芝居なんか辞めちまえ。俺はお前の、本当の名前を聞いてんだよ」
「、」

「レビコーパス!!」

ダンブルドアの呪文が先に響いて、蘭樹の体がこちらに戻ってくる。
そしてダンブルドアの隣にくると地面に着地した。

「ダンブルドア!そいつを返せ!!」
「この子は物ではない、ホグワーツの卒業生じゃ」

「俺様が話していた!まだ終わっていない!!」
「何をそんなに怒ってんだよ」

どうしたんだと眉を寄せる蘭樹に、ダンブルドアが口を開いた。

「あ奴の名が本物ではないと、なぜそう思うんじゃ?」
「なんでって、」

困ったようにポリポリと頭をかいて、こちらを見ている二人を見比べる。

「感覚の問題だから、口じゃ説明できねぇよ」
「あっはっは!感覚で物を言う。お前は猿のようだな!」

「ああ!?じゃぁてめぇはゴリラだよこの野郎!」
「あっはっはっは!」

言葉の応酬を楽しんでいるかのように笑うヴォルデモート。
その姿に死喰い人達さえ動きを止めていた。

ダンブルドアは目を細めて蘭樹を見ている。僕はその目に見覚えがあった。
大広間で、みんなで鍋パーティーをした時にも見た、何かを期待しているかのようなあの目。

「ランジュ、お主はキクオによう似とる」
「菊夫?曾爺さん?」

「曾爺?孫ではないのか」
「あ?ああ、うちはみんな結婚が早かったからな」

「そうか、そうだな。キクオも早かった」

そうかそうかと何度も頷いて、ヴォルデモートは蘭樹を見る。

あの、宝物を見つけたような目だ。

「ランジュ。もっとあいつの話を聞かせてくれ。あいつの死に際はどうだった」

教えてくれと、聞いたこともないほど優しそうな声で問いかける。

「俺もそんなに詳しくは知らねぇよ。曾婆さんも俺が生まれる前に死んでたし。ただ、」

ホグワーツで出来た友達の事をずっと話していたらしいと言えば、目を見開いて伸ばしていた手を戻した。

「そうか、あいつは死に際まで幸せだったか」
「どうだろうな。やり残したこともあるみたいだったし、そうとも言い切れねぇんじゃねぇの?」

「やり残したこと?」
「おお。一人、気になる友達が居たんだと」

最近はその人を探して同姓同名の知らない人の墓参りまでしたと言うと、杖を振り上げた。

「ランジュ!こちらに来い!!」
「下がっておれ!」

緑と赤の線が杖と杖を繋げ稲妻を巻き起こす。

強大な魔力と魔力のぶつかり合い。

これが闇の帝王と帝王が恐れたただ一人の魔法使いとの戦いかと、緊張感からか喉が渇いた。

「ランジュを渡せ!俺様の本当の名を教えてやる!!」
「なんだってんだよ!」

「よく聞くんじゃ、あ奴の本当の名は、」

トム・マールヴォロ・リドル。

「そして、ただ一人心を開いた相手がお主の曾爺にあたるキクオじゃった」

やっとヴォルデモートが蘭樹に固執する理由が分かった瞬間だった。

「ランジュ、お前はキクオによく似ている」

私が装う姿に惑わされず、真っ直ぐ目を見て恐れない。
まるで対等のような、他愛のない言葉のやり取り。

「一人とか、お前は友達の作り方を知らねぇのか!」
「あいつも同じことを言っていた」

『なんだ、友達の作り方知らねぇのか?』

「友など必要ない。俺様が欲しいのは強い忠誠心だけだった」

その私が友と認めたただ一人。

「ランジュ!こちらに来い!!」

お前と対峙するこの時をどんなに待ったことか。

蘭樹は立ち上がると懐から一枚の葉を出し、自身が乗れるくらい大きくする。

「校長。援護頼みます」
「何をする気じゃ」

「曾爺さんの遺言なんで、」

一発重いのをぶち込んでやると葉に飛び乗った。
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