ハリー・ポッター(夢)
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魔法史の授業中、先生が言う。
「魔法族と非魔法族。その違いは魔法を使えるかそうでないかです」
先人たちはその違いを認め、非魔法族との世界を分けました。
先生は一番最初の授業で言った。
みんながマグルをバカにしたように笑っているのを見てため息を吐いていると、梅並も笑っていた。
マグルをバカにしているのかと思って見てみるが、その顔は優しげで、蔑んでいるようには見えない。
眼が合うとほんのり笑ってノートを開き出す。
授業も真面目に聞いているし、まさかと思った。
お前は純血主義じゃないのか?
夕食の時、その疑問はさらに強くなった。
「マグル学の授業、どうだった?」
「面白かったぜ、内容がちょっと古かったけど」
スリザリンのテーブルで、梅並が蘭樹に聞いたのだ。
「日本の伝統的なカードゲームですって花札の事教えたら喜んでた」
蘭樹は笑いながらステーキを切り分ける。
兄弟そろってマグルの話を楽しそうにしている。
もしかして、本当に純血主義じゃないのか?二人の話が聞こえているはずのマルフォイ先輩も表情を変えずに食事を続けているし、僕の頭は混乱していた。
「明日は魔法薬学があるんだ。楽しみだよ」
「そういや、俺の教科書見てずっと言ってたな」
笑顔でうなずく梅並に、蘭樹も笑い返して頭を撫でた。
騒がしく、白い歯を見せるような笑顔じゃなくてとても静かで温かいその笑みに、僕は目を奪われる。
その顔はどことなく梅並と似ていて、改めて兄弟なんだなと思った。
「スラグホーン先生は優秀な生徒が好きだから、きっとウメナミも気に入られるよ」
マルフォイ先輩も微笑みかけてきて、照れた梅並は僕に話を振ってきた。
「セブルスは何の教科が気になる?」
「・・・僕も、魔法薬学が楽しみだ。母がたまに教えてくれる」
「そうなんだ、優しい人なんだね」
この感覚はなんだろう。
それからというもの、授業は梅並と受ける様になった。
魔法薬学の授業はグリフィンドールとの合同授業で、なんだか教室の空気が他の授業と違った。
「おできを治す薬だって、すごいね」
自分で薬を作るなんて初めてだよと目を輝かせながら話しかけてくるので頷く。
僕も初めて母さんに教えてもらった時は、すごく嬉しかったのを思い出した。
二人で黙々と作業を進めていれば、グリフィンドール側の席から先生の声がした。
「よくできているね!グリフィンドールに十点だ!」
言って、機嫌良さそうに他の鍋も見ていき、僕と梅並の前で止まった。
「ほう!二人も完璧だ!スリザリンに十点!」
褒められ慣れていない僕はどうしたらいいか分からなくて下を向いてしまったが、
「やったね!」
隣から声がして顔をあげると、嬉しそうに笑っている梅並がいた。
「名前を書いて提出しよう」
他の薬も見てみたいと、片づけを早めに終わらせて教科書を開き、他にはどんな薬があるのかと調べていく。
すると、リリーが来た。
「セブ!あなたももう提出したのね!」
「ああ」
「私この授業と相性がいいみたい。次も楽しみだわ!」
興奮したようにそれだけ言うと手を振って席へ戻って行った。
「知り合い?」
「・・・ああ」
「可愛い子だね」
隣を見ると、梅並はほんのり笑っていた。
「好きになるの分かるな」
「な!」
「今度は何を作るのかな」
楽しみだねと、こちらを見てニッコリ笑って見せた。
授業が終わり、教室を出て移動していると後ろから声をかけられた。
「そこの君」
梅並と二人、そのまま歩き続ける。
「そこの!黒髪のチビ二人!!」
その言葉に周りをキョロキョロと見回して、梅並が僕を見た。
「もしかして、私たちの事かな?」
「・・・どうでもいい」
行こうとしたら強い力で肩を掴まれる。
「おい!無視すんじゃねぇよ!!」
その生徒の手を振りほどくと思いっきり顔をしかめられたが、悪いのはどう見てもこいつだ。
「何かよう?」
梅並が首を傾げて聞くと、僕の肩を掴んでいた奴とは別の生徒、眼鏡をかけた男子が口を開いた。
「君、まだリリーと仲良くいられると思ってるのかい?」
「リリー?」
「お前に関係があるのか?」
何を言っているのか分からないのだろう梅並を気にせず返せば、眼鏡の眉間に深くシワが寄る。
「・・・まぁいいさ。でも、それも今日までだ」
彼女はグリフィンドールで君たちはスリザリン。もう関わろうとしないでくれと、それだけ言って背を向けた。
「・・・何?あれ」
「さぁな」
意味が分からない。そんな顔をしている梅並に一言だけ返して歩き出す。
午前の授業が終わり、午後の呪文学の教室へ向う。
「ウィンガーディアム レビオーサ」
フリットウィック先生が何冊も重ねた本の上で杖を振る。
それを見て教室中の生徒が目の前の羽に集中し始めた。
「ウィンガーディアム レビオーサ」
みんなが奮闘している中で、梅並の声が聞こえてきた。
キレイな発音でとても丁寧に発した呪文。そして、羽がふわりと浮いた。
先生に褒められて嬉しそうな顔を僕に向けてくる。それが少し悔しくて、自分の前にある羽に目を向けた。
「そんなに力を入れ無くていいんだよ」
見れば、近くに座っていた女子に話しかけていた。
「大丈夫。リラックスすればできるよ」
梅並の言葉にコクコク頷きながら頬を染めている女子。お前は何をやってるんだ。
呆れながら羽を見て杖を構える。一応、梅並が言っていたことも頭に入れておいた。
梅並は器用な奴だ。
どの授業も手こずっているようには見えなくて、先生受も悪くない。
他の生徒にもよく声をかけられている。
なのに、いつも僕の隣にいる。その理由が僕には分からない。
優越感に浸りたいのか、劣等感を持たせたいのか、同情か。
とりあえず、僕はその意味が分からなかったし、考えるとあまりいい気分にもならなかった。