ブリーチ2(夢)

□カナ58
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「イテテッ」
「はい、これで終わりです」

華奈の袖を戻して笑う花太郎に、礼を言いながら腕をさする。

「あ、あの」

振り向けば、

「おー!お前も手当て終わったのか?」

私も今終わった所だと、俯いている男に笑いかけた。

「あり、がとうごさいました」

ぐっと手を握って礼を言われる。

「いいよ、んなこと言わなくて。つーか」

思ってもないのに礼言われたって嬉しくねぇしと、華奈は歯を見せて笑うが、男は驚いた様に眼を見開いて華奈を見た。

それは、花太郎にくっついて来ていた荻堂も同じで、

「お前、今情けないとか悔しいとか色んな気持ちがグチャグチャで、私の事も余計なことしやがってくらいにしか思えないだろ」

ニヘラと笑って笑顔を深める、

「私も、お前を助けたっていうか、あいつらが気に食わなかったって方がでかいしな」

だから礼はいらないと、立ち上がって男を見上げ、

「今度からはお前が自分でかかってけばいいだけの話しだ」

そう言って花太郎にもう一度礼を言って手を振りながら部屋を出ていった。

閉まった扉を見て、

「・・・華奈七席って、優しすぎですよね」
「そうですね」

「そこが華奈さんの良いところですから」と笑う花太郎から、眼を反らす。


僕は気がついた。

君は優し過ぎて、君自身がその優しさにのまれて傷ついていくのだと。

僕は、そんな君に触れられない。

傷ついた君を治すのは僕ではない人。
そして、傷ついた心を癒すのは、

「・・・はぁ」

もう一人を決めてしまった君は、こちらを振り向く事はない。

今でも、好きだと思う。

欲しいと思う。

でも、君が傷を癒して笑っていられるのなら、それも良いかと思っている自分がいる。

「影響力大きすぎ」

僕は、決してそんな人間ではないというのに。



「あの、平子隊長?」
「なんや」

「いや、なんやって」

「もう戻らないとまずいんですけど」と、店の前で品物を見ている平子に言うのだが、

「まだなに買うか決めてへんのやから帰ったらあかんやろ」
「・・・」

ずっとこんな感じで、一向に伊江村を解放しようとしない。

「お前も見て決めろや、さっきから俺ばっかやないかい」
「見ろ、と言われましても・・・」

それは全て女物。小物などの装飾品。

「・・・誰かへの贈り物ですか?」
「まーな、なんか寄越せうるさいねん」

大変ですねと言えば、呆れた様に眼を半眼にしてこちらを見て来た。

「ついでやからお前も華奈になんか買ぉたれや」
「は、は?」

何を言っているんだと見れば、当たり前だろみたいに見返される。

「ほれ、このカンザシなん、どや?」
「はぁ・・・、華奈七席は髪が短いので、つける事が出来ないと思います」

そういえばそうかと頷いて、これはとブレスレットを持ち上げる。

「剣を奮う時に邪魔になると、いつもなにも付けていません」

包帯でさえ嫌がりますと眼鏡をあげる。

「ならこれは」

ネックレスを見せれば、

「戦闘時に引っ掛かってしまうと思います」

小さな体を利用して素早く動き回っている華奈を思い出し、納得。

「・・・なら、着物か」
「休日は森へ遊びに行くことが多いようで、いつも袴です」

少し無言で伊江村と見つめ合い、

「贈る気あるか?」
「私は一言も言っていませんが?」

ハァァァと盛大にため息を吐きだす。

「華奈も華奈やけど、お前もお前やで」

そう呟いて髪紐などが置かれているコーナーを見た。

「お前かて男なんやから、何かやりたいとか思わへんのか?」
「・・・」

「俺は思うけどなぁ?あいつに物やって、それ使てる所見て、喜びや思うし」

何より、こいつは俺のだと言葉にせず知らしめられると、赤い紐を二本購入した。

「ま、そういうんは人それぞれやけど、俺の勝手なお節介や」
「・・・まだ、気にしているんですか?」

自分が記憶を無くした時の事。

店の出口へ向かっていた足を止め、こちらを振り向かず話す。

「華奈の過去、見たって聞いたで」
「私はその場にいた訳ではありませんが、」

「そうやったんか、」

華奈の祖父の最期、華奈が頭を撫でられる事を好きになった経緯。

そして、伊江村が眼を覚まさなかった時の行動。

「お前が寝てる時、あいつはずっとお前の側におって、どっかしらに触れとった」

温かい事を確かめるように。

そして、誰もいない時に伊江村の胸へ耳を当て、その鼓動に眼を閉じて安堵していた。

「あいつの事、大事にしたりぃ」


あなたが、私の全て。


平子が出ていった入口を見つめた後、クルリと振り返って一つの小さな箱を手に取った。
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