3月のライオン(夢)

□藤本2
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そいつは目立たない奴だった。

「あ、教科忘れちゃった」
「借りてきたら?」

「そうする」

和子と廊下から聞こえてくる女子の声。少しして、教科書を片手に戻ってきた。

「やっぱり和子って頼りになるう!」

ノートまで貸してくれたと嬉しそうに開き、友人だろう数人で写し出す。


授業後、あの女子が教科書とノートを持って立ち上がると教室の扉が開いた。

「あ、丁度返しに行こうと思ってた所だったよ」

ありがとうと礼を言われれば、

「どういたしまして」

笑って差し出された物を受け取る。

「うちのクラスに用事?」
「うん。さっき先生に頼まれて、次の体育は外に集まってって」

みんなに伝えてくれる?と首を傾げ、出て行った。


そいつは目立たない奴だったが、決して影が薄い訳ではなかった。


かゆい所に手が届く。こいつになら任せられる。
教師や友人が頼るのは決まってそいつだった。
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