Another world -僕らの未来と-

□南木雄一と"墓場系女子"
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○○県渡辺市。都会とも田舎とも言えない市で観光名所もない、言ってしまえば目立たないまちがある。そんなまちだが人口は多く、政令指定都市に指定されている。だからこそ若者が多く、これからが期待されるまち、それが渡辺市だ。

これは、そんな渡辺市にある県立渡辺三島(わたなべみしま)高校に通う男子生徒、南木雄一と彼を取り巻く人々のお話である。

  南木雄一と"墓場系女子"

南木雄一は一言で言うと暗い人間だ。他人と関わることを避け、進んで日陰にいるような、そんな人間だ。言ってしまうならば隠キャラ……そんな雄一の、唯一の居場所とも言えるのが「PEPPER酢醤油」という名前のコミュニティー。馴れ合いを目的とした場所なのでリアルのようにいじめられることもなければ無視されることもない。雄一にとってそこは、画面を通して他人に触れられる場所だった。

雄一はPEPPER酢醤油の主催者である人間「墓場系女子」が気になっていた。自分や他のメンバーが落ち込んでいるときに優しさを見せたと思えば、今度はツンツンとした冷たい態度を取る墓場系女子。なぜそんなにも態度が変わるのだろうかということも気になっていたが、どうしても雄一は墓場系女子が嫌いにはなれなかった。いや……雄一は、墓場系女子に好意を抱くようになっていた。それはきっと一目惚れになるのかもしれない。

きっかけは「今日の写メスレ」だった。まだ書き込みがされていないアンカー番号を指定し、指定された番号を踏んでしまったメンバーが数分の間自らの写メをコミュニティーに掲載する。そういった内容のスレッドで、雄一は墓場系女子の名前と顔を知った。

墓場系女子が掲載したのはプリクラだった。目の上にに黒線を引き目を消されている墓場系女子の友人の歯を見せたさわやかな笑顔より、雄一は墓場系女子の表情のほとんどない顔に視線がいった。

「しおり、ちゃん……?」

頭の上に書かれた「志織」の文字と、二重瞼の茶髪ショートの女が、雄一の頭から離れなかった。可愛いと感じた。志織に一目惚れしたのだ、雄一は。

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