あなたに蘭の花を
□1章:鬼ヶ里へ
1ページ/5ページ
―――5月5日。
今日は私の誕生日。
16歳になったのだ。
でも、誕生日だからといって家族や友達と遊びに行くわけでもなく、毎年恒例の旅館のお手伝い。
この時期はゴールデンウィークでお客さんが多くて忙しいのだ。
『まぁ…バイトだと思えば良いわ。』
うちは旅館を営業している。
幼い頃からたまに手伝いをしているから接客には慣れていて、今となっては女中並みの働きくらいは出来る。
中学を卒業して間もなく、この旅館の主であるおじいちゃんが「理緒はもう高校生だから欲しい物もできるだろうし、お金が必要だろうから、これからは働いた分だけ報酬を渡そう。」と言ってくれた。
ダイニングに行き、一時間ほど前にお母さんが作っておいてくれたであろう朝御飯を急いで食べて、旅館に出るための着物に着替え、旅館に向かう。
さぁ〜て、が〜んば〜るぞ〜っ!