□貴方が一番大嫌い
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第1話



最低でも白石の千歳に対する第一印象は良かった。
自身も身長の高い部類に入ると自負していたが、彼は規格外にでかい。その身体から繰り広げられるプレイに魅力されたのも事実だ。


「あ〜もう何やねん! お前なんか大嫌いや!」
「……奇遇やね、俺も白石んこついっちょん好かん」

なんでこうなった? と謙也は頭を抱えずにはいられなかった。はぁと吐いた深い溜め息は二人の喧騒に飲み込まれていった。




一週間前。
千歳のサボり癖が如実に現れ始めたが、そんなこと露知らず皆で何故来ないのか心配したものだ。
そして先週の内一度だけ現れた際に尋ねると

「ちょっと散歩しとったら部活んこつ忘れとったばい」なんて。

その瞬間、聖書と呼ばれる白石の琴線に触れた。

心配していたのに。
部活に馴染めないで困っているんじゃないかって。具合が悪くて学校に出てこれないんじゃないかって。

「なんやねん。なんっっっやねん!」

そうして白石はブチ切れた。
メンバーが必死に止めにかかったのを覚えている。


「あ〜もう何やねん! お前なんか大嫌いや!」

「……奇遇やね、俺も白石んこついっちょん好かん!」

火に油を注ぎ込む千歳の口を塞ぐも後の祭り。バチバチバチと二人の間に稲妻のような溝が深まる。その後、乱闘必至で部活どころではなくなってしまった。








「なぁ、もう許したったら?」
「何をや」
「…………」

白石は睨むような視線をやるとくるりと方向を変え、ベンチに向かっていった。
最近白石は苛立ってばかりだ。
もちろん千歳のことなのだろうけれど、これほど剥き出しで他人を嫌悪する姿を初めて見る。謙也が知る限り、白石という男は物言いははっきりだが優しく人当たりが良い。

そんな白石が声を大にして嫌う千歳が大物なのか、白石が生理的に合わないのか。
ポジティブに捉えると、千歳という存在は白石にとって良くも悪くも“特別”なのだろう。


「謙也くぅん心配することないわよ〜」
「小春……」
「あれでいて、案外上手くいきそうやない?」

ちょうどコートに現れた千歳に白石が歩み寄る。

「なんや千歳、もう来いひんくても良かったのに」
「そういう白石が来なきゃよかろうもん」
「アホか俺部長やぞ」
「そげね? 知らんかったばい」
「んなワケあるか!」
「そもそもシライシって誰ね?」
「てめえぇぇ」


まるで小学生のような言い合いに唖然とした。小春がクスクスと笑う。

「あんな蔵リンも新鮮でいいわねぇ」
「浮気か!」
「いっそ殴り合いさせたんが早いんちゃいます?」

いつからいたのか、小春に縋るユウジと過激発言の財前がしれっと混ざる。

これは杞憂なのかもしれない。こんな白石を見るのは初めてだが、それが悪いことだと思えなかった。



続く!
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