□ふたつぼし
1ページ/2ページ




「謙也くんは太陽んごた」

最近千歳が繰り返す言葉だ。
そして続けるのだ、

俺は向日葵にはなれんから、と。

哀しみを滲ませた瞳で、
愁いを帯びた表情で、
伸ばした手を諦めてしまう。


「千歳、千歳好きや」
「いけんよ、謙也くん」
「なんでや」
「だって、向日葵にはなれんもん」

ほら、また言う。

「俺は千歳が向日葵だったら嫌や」
「例えたい」
「あほ、知っとるわ」


俺だって太陽なんかじゃないけれど。
千歳が望むなら、太陽にだってなんだってなってみせるから。

「せやから千歳には」
「俺、には?」
「向日葵じゃなくて……」
「…………」


月であってくれたらいい、と思う。


「見つめられるだけなんて性に合わん。照れてまうわ」
「でも、」
「なぁ、千歳。もっと頼って利用してええんやで」
「できんよ……」


飲み込んだ言葉をどうすれば引き出せるだろう。
そこに、全ての答えがあるのに。


「俺とおると楽しいって、幸せやって思てくれるんやったら、俺かてそれが幸せやねん」
「嫌ばい……」
「千歳、」

頑なな心を、俺では解せない?
俺って頼りないかな?
もっと頑張れば、千歳は俺を頼ってくれる? もっと、もっと――


「謙也くんだけが頑張るんは嫌ばい」


やっぱり俺は太陽になんかなれなくて、
けれど千歳も月なんかじゃなかったのだ。



「俺らは星やったんや」
「……俺も?」
「おん。俺も千歳も小さい米粒くらいの光り放っとる」
「細かねぇ」
「俺達は個々に光る星で、だからこそ手ぇ繋いで二人で頑張れる」
「謙也くん」


千歳のためなら頑張れる
この言葉に嘘はないし後悔もない。

それでも長い人生を考えて、いつか限界が来るかもしれない。
精神か肉体か、きっとその時千歳も俺もお互いじゃ癒せない傷を負うのだろう。


「千歳は光っとんで」
「謙也くんも光っとう」

こんなに近くで光っていたのに。


「俺らやっとお互いの光り見つけたんや」


千歳の涙を一つ二つと拾う。

隣で手を繋いでいるから、もう見失わないよ。
だから千歳も隣で感じていてほしい。


「ずっと千歳の傍におりたいねん」

「うん……っ」


二人で並んで頑張っていこう。
そうすればきっと、何倍も輝けるから。




END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ