□運命×約束×恋心
1ページ/5ページ




『引っこすってほんなこつね?』
『うん。親の転きんじゃき、しかたないぜよ』
『会えなくなると?』
『……遠くに引っこすけんのう』
『……さびしくなるばい』
『ちぃはオレんこと好いとう?』
『オレは……まさくんのこつ好いとうよ』
『ならちぃ、こんど会ったとき――』







「あれ?」
「どうしたん千歳?」
「いや、なんでんなか……」

全国大会に向けライバル校を研究中のこと。ビデオの中の白髪の少年に見覚えがあるような気がした。
何処か、遠く昔に会ったような――

「プレイで気付いたことはなんでもいいや。そのために撮ってきてんから」
「んーわかっとるばってん、今のはほんなこつ何でもなかよ」
「ならええねん」

確か今再生している立海のダブルスは……仁王雅治と柳生比呂士だ。
ニヒルな笑みを浮かべ相手を翻弄するのは“コート上の詐欺師”――におうまさはる。

まさはる……まさ……。

“オレは……まさくんのこつ好いとうよ”


「……あ、」

いやいや、まさかね。


「そこ巻き戻して」
「何か気付いたんか?」
「綱渡りって技すごかねぇ〜」
「なんやそら」
「白石、もう一回」
「あーもう! 千歳と見ると無駄が多いー」

と言いつつ巻き戻すことを知っているから、戯れ事は無視して画面にかじりついた。立海のレギュラーは本当にレベルが高い。技一つ一つの精度も高く、見ていて引き込まれる。全国制覇を目指すなら、やはり度外視できる相手ではないだろう。

それに。
記憶の中の“まさくん”とは何者なのだ。先程見た試合に出ていた仁王雅治と関係あるのか。

(全く覚えとらん……)

“ならちぃ、こんど会ったとき――”

何かとても大切な約束をしたような気がするのに、思い出せない。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ