長編

□第三話
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「あ? 近藤さんがいない?」

「はい、さっきお部屋にお邪魔したんですけどいなくて……ってこれ最初と同じ文章じゃないですかァァァ!



「神崎落ち着け。 一見同じに見えるが…」







「「今は昼だ」」







そう二人で言いそしてまた二人でため息をついた。


「もう昼間っから何やってるんでしょうあの人は」


昼間は普通夜のお店はやってない。だからお店ではないことはわかる。


「どっかほっつき歩いてんだろ。 もうほっとけ」


土方さんは完全に呆れたという表情でそう言った。







「何ィィィ!! 結婚申し込まれたって!?」



お妙の弟、新八が姉の突然の報告に叫んだ。


「マジでございますか姉上!!」

「マジですよ。 お店のお客さんに昨日突然ね」


お妙は笑顔で新八に言う。


「で……何て?」


新八は恐る恐る聞く。しかしお妙は全く表情(怖いぐらいの笑顔)を変えず言った。


「勿論丁重にお断りしたけど、びっくりしたわ〜。 初めて会ったのにあんなにしつこくせまってくるなんて」


そうしてお妙はもっとにこやかになると言った。


「あんまりしつこいから鼻にストレートキメて逃げて来たの




怖っっ!



新八の顔が思わず引きつる。


「そ……そーですか……どんな人か僕も見たか……!」


新八は言葉の途中で視界の端に入った不審な物に気づいた。




「お妙さァァァん!! 結婚してくれェェェ!! 」


それは電柱に登っていて鼻に絆創膏をつけた男だった。
近藤である。


「一度や二度フラれたぐらいじゃ俺は倒れんよ!! 女はさァァ、愛するより愛される方が幸せなんだよ!! って母ちゃんが言ってた」


叫ぶこと叫ぶこと。

新八はただその男を顔を引きつらせながら見てることしかできなかった。


「こらァァァ何やってんだ! 近所迷惑だ、降りてこいコノヤロー!!」


警察が男に向かって叫ぶ。


「お巡りさんおちつけェェ!! 俺は泥棒は泥棒でも恋泥棒さ!!」

「何満ち足りた顔してんだ!! 全然うまくねーんだよ!! 降りてこい!!」

「お妙さァァん!! 顔だけでも出してくれないかな〜!!」


そんな叫び声が飛び交う中お妙は机の上にあった灰皿を手に取る。



「お妙さん!!」


少し見えたのか。
近藤が叫ぶと同時にその顔に灰皿が。

それはそれはすごい音をたててヒットした。



近藤はあえなく電柱から落ちた。
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