鏡の国の王子様
□第二章:合流A
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ギニューとジースは、市場へ向かって歩いていた。
街へ着く間、ジースが一方的に喋るばかりで、二人の会話はまるで成立していなかった。
(どうしたんだろう、ギニューさん・・・)
と思いながらも、ジースは会話を続けた。
街の中心まで来ると、ギニューはジースに訊ねた。
「市場はどこだ」
「あ、ええと・・・あの黄色い屋根の建物の奥です・・・」
と、ジースは指で場所を示した。
(んん〜?久しぶり過ぎて忘れちまったのか?)
ギニューの問いかけに少々の疑問は湧いたものの、いつもの『ま、いっか』で処理をした。
休日だけあり、街は賑わっていた。
(おいおい・・・この混雑の中を抜けて行くのかよ・・・絶対囲まれるぞ・・・)
ジースはやや不安な気持ちになりながら、周りをキョロキョロしだした。
人々はこちらを見て、ヒソヒソ・・・と話をしている。
もちろん、そんな様子は気にも留めないギニュー。
その時、 二人の前に10歳くらいの少年が飛び出してきた。
「・・・・・なんだ?」
ギニューは、表情なく少年に向かって言った。
「・・・ええとぉ・・・サインください!!!」
深々とお辞儀をしながら、色紙とペンを差し出す少年。
その瞬間、先ほどまでヒソヒソとこちらの様子を見ながら話していた大衆がドッと押し寄せ、「俺も」「私も」とサインや握手を求め始めたのだ!
(ほらきた〜!)
ジースは思わず半分涙目になった。
ギニューは、自分の周りに集まってきた人間を見て、眉間にシワを寄せた。
横にいるジースは、オロオロするばかり。
その態度に、いつものギニューなら一喝する所だが、それすらの隙も与えず、人だかりは増え続ける。
「おい、ジース!何なんだ?コイツらは!」
「何って…みんなギニューさんのファンですよ!」
ジースは爆弾発言を、事も無げに言った。
「オレのファンだと!?」
一瞬、絶句するギニュー。
それを見たジースは、
「ファンクラブだってあるじゃないですか!」
と、トドメの一撃を出した。
「オレの知らない所で、そんなものが…」
ギニューは、少し青ざめた顔で呟いた。
「このファンクラブはギニューさん公認ですよ。発足時、自分で『好きにしろ』と言ったじゃないですか!」
ジースは、不思議そうな顔で言った。
「い…言ったのか?オレが?」
ギニューの問いに、ジースは『うんうん』と首を縦に振る。
「ま、まさか、このオレにファンクラブとは…」
ギニューは、頭を抱え込んでしまった。
「しかし…オレにはフリーザ様が…あの方を差し置いて…」
独り言を言い始めたギニューに、ジースはますます焦り出した。
「それより、早くここを離れないと!」
だが、身動きが取れない状態で、どう切り抜けようか。
思案した結果、ジースはあることを思いついた。