鏡の国の王子様

□第一章:出会い グルドバータ
1ページ/4ページ

バータは柔らかい地面の上に落ちた。

おかげで痛みはなかったが、代わりに甲高い鳴き声が聞こえた。

「うわっ!何だ!このやかましい声は!」

咄嗟に耳を塞ぎ、辺りを見る。

そこは白い地面だった。

フサフサしていて、温かかった。

まるで生きているようだ。

「ん?生きて・・・?」

もう一度、周囲を見た。

「えっ!地面が・・・動いてる!?」

周りの景色が流れるように通り過ぎていく。

「オレ、空なんか飛んでねぇぞ!」

また甲高い声がした。

更に、バサバサと羽音まで聞こえてきた。

「ま、まさか・・・鳥か!?」

ようやく自分のいる場所が理解出来た。

バータは、巨大な真っ白い鳥の背中の上にいたのだ。

「何だよ!このでっかい鳥は!」

鳥は、背中にバータが乗っていることに気づいていないのか、嫌がる様子もなく飛び続けている。

「コイツ・・・どこへ行くつもりだ?」

考え込むバータの耳に、今度は助けを求める声が聞こえてきた。

「おーい!そこに誰かいるのかぁ〜?!俺を助けてくれ〜!!!」

最初は空耳かと思ったが、違うようだ。

声を辿っていくと、主は鳥の脚辺りにいた。

「グ、グルドじゃねぇか!お前・・・なにそんな所で遊んでんだ?」


と、バータは場違いな質問をした。

「空、飛べるんだから自分で何とかしろよ!」

だが、よほど混乱しているのだろうか。

グルドは思いっきり首を横に振ると、早く助けるよう、バータに催促した。

「ちっ!しょうがねぇな・・・」

バータ
は舌打ちをすると、鳥の体毛を掴みながら足元まで進んだ。

助けようと手を伸ばした時、グルド以外に絡み付いている物を見つけた。

「はぁ?脚に引っ掛かっているの・・・お前だけじゃねぇのか?」

そこにあった物は・・・鏡だった。

「いいから早く助けろよ〜!」

グルド
バータが差し出した手に捕まり、漸くグルドは鳥の背中まで移動する事が出来た。

「ふぅ〜・・・危なかったぜ・・・サンキューな!バータ」

グルドは汗を拭きながら言った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ