鏡の国の王子様

□第一章:出会い ギニューザーボン
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「おい、王子いるのか・・・?」

王子の部屋のドアが十数センチ開いた状態になっていることに気付き、ドアから顔を覗かせたのはこの城で料理長を務めるギニューだった。

普段、王子の自室のドアは全開、もしくは閉まって壁と一体化している状態なのだ。

しかし、珍しく少し開いているのを中庭を行き来しているうちに目に入ったらしい。

ドアを開け、中に足を踏み入れると妙な音がすることに気付いた。

妙な音はテラスの方から聞こえてくる。

そーっと忍び足でテラスへと向かっていく。

何かが目に入りテラス手前でふと足を止めた。

「なんだ、グルドか・・・こんなところで寝やがって・・・」

グルドは、よく日が当たる窓際の椅子ですっかり眠っているのだった。

恐らく休憩時間なのだろう・・・と判断したギニューグルドを起こさず、鳴り止まぬ妙な音のするテラスへと出てみたのだった。


テラスに出た途端、ギニューは額に手を当て、大きなため息をついた。

「リクームまで寝てやがる・・・」

妙な音の犯人はリクームだった。

それも、ただのいびき。

ギニューは、思いっきり大の字に寝転んで夢の世界に浸っている姿を見て、呆れ返ってしまった。

ため息をついたギニューは、二人を起こさないよう踵を返し、テラスから部屋へ戻ろうとした時だ。

ドーーーン!!!

「な、なんだ??」

テラスから聞こえた爆音に瞬時振り向いた。

「お、王子じゃないか!!!」

なんと、今までいなかったはずの王子がリクームを下敷きに倒れているではないか!

何がどうなって、王子がここに倒れているのかは分からない。

外壁をよじ登ると言う芸当など、王子には出来ないだろう。

(空から降ってきたのか?いや、今はそんな事はどうでもいい!まずは王子の状態だ!)

「おい!王子!!大丈夫か?!」


顔をペチペチと数回叩いてみるが、唸るだけで返事はない。

「意識が無いのか・・・これはまずいな・・・」

いつもは冷静沈着のギニュー

そんな彼でも、紫色の肌が少しばかり青ざめた。

王子が長い髪を三つ編みにしていることや、額や耳に飾りをしていることは多少気になったが、そんな余裕は無い。

もしかしたら、一刻を争う事態かもしれないのだ。

「おいっ!!貴様らー!!起きろ!!!」

しかし王子の下敷きになっているリクームは、それでもまだ幸せそうにいびきをかいている。

二人は、いびきのコーラスを部屋中響かせるだけで、一向に目を醒ます気配はない。

「ちっ!役に立たんヤツらだ・・・仕方ない・・・」

ギニュー
は三つ編みの王子を乱暴に自身の肩へ担ぎ、慌てて救護室へと運んで行った。
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