鏡の国の王子様
□第一章:出会い ジース&ギニュー編
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全身に痛みが走った。
何かが凄い勢いでぶつかってきたようだ。
どこか遠くで喚いている声が聞こえる。
うるさいヤツだと、ギニューは思った。
しかし、この声には聞き覚えがある。
誰だったか…と考えているうちに、意識が覚醒していくのが分かった。
重いまぶたを開くと、目の前には見慣れた真っ赤な顔があった。
そしてギニューと目が合うと、何故か叫び声を上げた。
驚いた顔で後退りしながら、何やらギニューに話しかける。
「……」
だんだん意識がハッキリしてきた。
この男はジースだ。
しかし、格好がいつも違う。
戦闘服ではなく薄着なのだ。
正しくは、白のTシャツに紺のハーフパンツという出で立ちである。
だがギニューは、普段こういう格好をしないので分からない。
戦いの中で生きてきた彼にとって、このような格好は命取りとしか思えなかった。
自ら『殺して下さい』と言っているようなものだからだ。
だがジースはピンと来ない様子で、ギニューを見る。
その態度がギニューの怒りに火を注いだ。
「第一、何故オレのことを『さん』付けする?ギニュー隊長と呼べ!」
ギニューの言っていることが何だかよく分からないジース。
しかし、どういうわけか、ギニューは自分を『隊長』と呼べと言っている。
いつもと何かが違う気迫に押されたジースは思わず、
「はっはいぃぃっ!!ギニュー『隊長』!!」
と敬礼してしまった。
が、次の瞬間。
ギニューの気迫などすっかり忘れ、いつもの軽い調子で 、
「あっそうだ!それよりギニュー隊長はなんでこんな原っぱみたいなところで昼寝してたんすか?」
と、聞いてみたのであった。