鏡の国の王子様
□プロローグ:特戦隊編
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ザーボンの部屋には、たくさんの鏡があった。
常に美しさを追い求める男には必需品のようだ。
逆に、特戦隊メンバーの部屋には鏡が無い。
あるとすれば、バスルームかロッカールームくらいだろう。
「オレ、鏡を磨くの…実は好きなんだよな〜!」
特戦隊のイケメン担当(自称)のジースは、ニコニコしながら言った。
鏡に「はぁ」と息を吹きかけ、布で擦る。
キュッ、キュッとなる音が心地いい。
「よし!キレイになったぞ!」
仕上がりを見て満足する姿は、とても悪の集団に組みする人間には見えない。
「どうだ?綺麗になったか?」
部屋に入ったザーボンは、鏡の前で誇らしげに立っているジースに声を掛けた。
「ほら、見てみろよ!ピカピカだろ!」
ジースは自慢げな顔で鏡を指差す。
「ほう…貴様にこのような特技があったとはな。ただの菓子好きではなかったワケか」
褒めているのか、けなしているのか、ザーボンはよく見ようと鏡に近づいた。
その時、ドアの向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。
「ジース!バータ!きさまら何をやっとる!」
「ズルいぞ、二人とも!オレにも美味いお菓子を食わせろ!」
「はぁ〜い、ザーボンちゃん!久しぶりだな〜!」
耳障りな声にザーボンは溜め息を吐きながら、
「うるさい連中が増えたぞ…」と、呟いた。