小さな物語2
□理想って何だっけ
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最初は、気配りのできるいい女だった。
好きになって、努力して、告白されて、付き合いだして。
彼が褒めてくれるのが、本当に本当にうれしくて、小さな努力を積み重ねてきた。
そんな彼の「理想の彼女」に疲れ始めたのは、一体いつからなのだろう。
「前はもっと気の利いた子だったのにね」
彼の視線が私を突き刺していく。
それは努力していたからよ。
あなたに褒められたくて。
思っていてふと気づく。
私、愛されたくて、じゃないんだ。
「俺、結構お前のこと好きだったからさ、今泣きそうだけど」
お前は表情すら変えないんだね。
彼の言葉に驚き、渇いている頬に触れる。
泣いて、泣いてよ。
悲しいじゃない。寂しいじゃない。
ねえ、何で出ないの。
ひとつため息をついてから背を向け去っていく彼。
その後姿を見つめる一方で、心の奥底ではどこかすっきりしている私がいた。
最後は、最低な女で終わった。
理想って何だっけ
(相手に無意識に求めてしまうもの?)
(少なくとも私にはただの枷でしかなかった。)