君がいるから

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青空が澄み渡る今日の良き日。

駄菓子屋で買ったどんぐりガムをくわえながら、学校への道をのんびり歩いていた。

今日の数学の課題は昨日終わらせたから、休み時間はゆっくりできる。そんなこと考えていると、ふと聞き覚えのある声がして顔を上げる。

すると、前方に見覚えのある赤髪。思わず顔を綻ばすと、赤髪の彼はくるりとこちらを振り返った。

「あ!柚葉だ!柚葉ー!」

向こうも私に気付いて顔を輝かせると、あっと言う間に私の元まで走って来た。

そして、そのままの勢いでがばりと私に抱き付く。

「おっはよー!」

「おはよ、丸井」

ふにゃりと子犬のように笑ったのは、私の一番大切な友人の丸井ブン太。

よろつきながら、私よりは僅かに小さい彼を受け止めると、丸井は嬉しそうに笑う。スキンシップが多いのはいつものことだ。

いつも通りの元気な姿が嬉しくて、私もつい顔が緩ぶ。

すると丸井はまた可愛らしく笑って、一度強く私に抱きついてからゆっくりと離れた。

その姿に愛しさを感じながら、丸井の後ろからのんびりとした足取りで近付いて来る銀髪に目を向ける。

「おはようさん」

「おはよー仁王」

「あっ、仁王のこと忘れてた」

てへっと笑う丸井の頭を仁王が小突く。何でだ。可愛いじゃないか。小突かれた場所をさすれば、今度は私が小突かれた。何でだ。

ちなみに、丸井と仁王とは同じクラスなのだ。他のテニス部の人達とは面識がないけど、顔と名前は知っている。

「あれっ、何食ってんの?」

「どんぐりガムだよ」

「良いなー」

「そう言うと思って、丸井の分も買っておいたよ」

「まじ!?」

ちっちゃいどんぐりガムは30円で普通に売ってる。一つポケットから取り出して渡すと、丸井は心底嬉しそうに笑った。

ぴょんぴょんと飛び跳ねて、機嫌の良さが全身から滲み出ている。

「へへ、丸井が楽しそうだとこっちが嬉しくなるね」

「……そうかのう」

呆れたように溜め息を吐く仁王。最初の頃はよく甘やかしすぎだと注意されたものだ。こんなの序の口なのに。

「柚葉柚葉!今日、部活終わんの待っててくれよぃ」

「ん?どこか行きたいの?」

「んーん。柚葉と遊びたいだけ」

「そっか。じゃあ練習見とくね」

「おう!」
丸井があまりにも嬉しそうに笑うものだから、私も張り切って部活見学をしようと思った。

「折角だから、俺も見ときんしゃい」

「うん。頑張ってね」

「はあ!?だめ!柚葉は俺専用!」

「ごめんね仁王」

「ちょ、切り替え早っ……」

そんな風に話しながら校門をくぐり、靴箱へと行く。

仁王の靴箱からラブレターがはみ出していた。仁王は照れながら鞄の中にそれを押し込んだ。完全に余談である。

丸井が靴を取り出した時、ふと思い出したように口を開いた。

「そういやさ、今日転校生来るんだって」

「転校生?うちのクラスに?」

「うん。昨日職員室で聞いたー」

転校生か。楽しみだな。丸井も嬉しそうだし。

「……あんまり嬉しくないぜよ」

「ん?」

「嫌な予感がする」

仁王が面倒臭そうにそう言う。けれど、基本的に仁王の勘は当たらないからスルーしておいた。




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