小さな物語

□怖いのはお好き?
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「お母さん、今日、人身事故を見たの。人が一人死んでた」


娘がそんなことを言い出したのは寒さがますます厳しくなってきているある夜のことだった。




「あら、大丈夫だった?」




サスペンスドラマの死体ですら
悲鳴を上げるほどの娘が
目の前でそんな事故があればトラウマものだろう。


そう思って声を掛けたのに娘は至って普通で、少し違和感を覚えた。




「凄くびっくりしちゃった。突然大きな音がして振り返ったら飛んでたんだもの」




淡々としゃべる娘に特に返す言葉もなくただうなずく。


すると思い出したように娘は言った。





「そういえば亡くなった人私が知っている人だったよ」



「へぇ、誰だったの?」





単なる興味で聞いただけだった。

なかなか答えない娘を不審に思い振り返ると



頭から血を流しながらニタリと笑って言った。






「私だよ」





突如電話が甲高い音で鳴り響いた。








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