小さな物語
□幸せな時
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時計の針の音。
ペンの走る音。
二人の息の音。
紙が擦れる音。
しん、としたボスの執務室。
それらの音だけが発することを許されていた。
ベルたちが起こした件の始末書が溜まっているから少し手伝えと、ボスから呼び出され来てみれば見事に会話ゼロ。
ボスにしたら仕事に集中しやすいだろうが、
私はこの部屋の威圧感だけで既にパンクしそうだ。
ちらり、ちらり、横目で訴えてみる。
反応は無いか。
むしろあったらあったで怖いけど。
ワインレッドの瞳は書類に釘付けだ。
諦めて視線を手元の書類に戻す。
まったく、ベルとフランったら。
騒動は起こすなってあれほど言ったのに。
一つ、ため息を吐いた。