君がいるから

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「ごめん」

屋上へと来てすぐ、丸井は頭を下げた。申し訳無さそうに眉を下げて。

「……いや、私のせいだし」

「柚葉は何も悪くねえだろぃ。あんな奴が言うこと、ほっとけばいいのに、俺が勝手に怒ったんだから」

「……でも、嬉しかったよ。私の為に怒ってくれて」

丸井が泣きそうな顔をするものだから、私は慌てて笑みを浮かべた。

別に梶原さんが私のことを何と言おうと気にしないけど、丸井が私の為に怒ってくれたことは本当に嬉しい。

「……だって、柚葉はいつも俺の為に怒ってくれるから……」

「や、それは当たり前じゃん。私にとって丸井は本当に大事だし」

「……うん」

素直に言うと、丸井はきゅっと唇を噛んで俯く。小動物みたいなその姿が可愛くて堪らない。

微笑ましい丸井に素直に微笑んでいると、丸井はゆっくり顔を上げ、しっかりと私の目を見つめた。

「それと一緒」

「うん?」

「柚葉が俺のこと大事にしてくれるみたいに、俺だって柚葉が大事だから」

真剣な表情の丸井に、私はぐっと唇を噛みしめた。眉が自然と下がり、情けない顔をしているのがわかる。

でも。

丸井の言葉が、声が、表情が、全てが嬉しい。切ないくらい、愛しい。

「……ありがとう」

「ん」

丸井の太陽みたいな笑顔が大好きだ。私の光になってくれるこの笑顔が。

「……俺もおるんじゃけど」

「……あ」

ずっと私の視界の片隅でチラチラとしていた仁王が、気まずそうに口を開いた。

丸井はすっかり忘れていたらしく、はっとしたように仁王を凝視する。仁王は肩身が狭そうにしながら私を見た。

「……俺も、柚葉のこと大事な友達じゃと思っとうよ」

「……うん。ありがとう」

仁王は良い奴だ。梶原さんに何を言われても、友達をやめたりしたくない。やめる気は毛頭ないけど。

「話もまとまったことだし、寝るか」

「風邪引かない?」

「皆で寄り添って寝たら大丈夫だろぃ」

「川の字じゃ川の字」

三人で手を繋いで寝転んだ。ぽかぽかと照る太陽と柔らかな風が青春っぽくて、何だかとても嬉しくなった。

「……何か教室戻りにくいよな」

「……変に目立ったからのう」

「……私の名前もろに出てたし」

三人揃って微妙に憂鬱になった。

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