短編
□日本を見据える仏頂面:穂謙
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「それにしてもそっくりやな」
大仏の顔を見て謙也が呟いた
「何が?」
「何って・・・コイツとお前」
「俺?」
穂走が 有り得ない といった表情をした
「何っちゅうの?この仏頂面なとことか?まあ大仏さんは仏頂面で当然やねんけどな」
ニヘラと笑って続ける
「穂走もいっつも仏頂面やんけ、何考えとんのか分からへんしコイツほんまに感情あるんかって思うくらい無表情やからなあ」
「それは褒めているのか?貶しているのか?」
「べっ・・別に貶してへんがな!!まあクールっちゅうこっちゃ!!・・・せやけど・・・」
「?」
「たまには笑えやって思う」
「笑う?お前だって俺が笑っている姿は見たことあるだろう」
「まあ・・確かに俺が倒れてそこを怪しそうにニヤリと笑っとる姿は何回か見たけど・・あーそういう意味とちゃうくて・・・・ちゃんと心の底から楽しくて笑ってほしいっちゅうか・・・・」
「俺はこのゲームを心の底から楽しんでるが」
「いやいやいや、それはないわ!!」
「なぜそう断定できる?」
「やって俺わかるもん」
「何を?」
「そいつがちゃんと笑っるのか、楽しんどるのか」
「なぜ?」
「ずっとテニスしとったからかな・・ホンマに楽しんで笑っとる奴ばっか見てきたからパチモンの笑顔なんかすぐに見分けられんねん」
「ほう・・・・そうか・・・・・」
「いやーせやけど同じ仏頂面でもお前と大仏さんはちょおちゃうなあ」
「違っていて当然だ」
「いやいや、ほら、大仏さんて日本を見据える象徴っちゅうかこう盛大なイメージやけどお前は何も世界を知らん小さい奴っちゃなあって思って」
「別に見据えたいと思わない・・・」
「せやけど、今日来て良かったって思わん?」
「まあ・・・・後悔はしていないが・・・」
「良かった」
「っ・・・・・・・?!」
くしゃりと笑う謙也に穂走は思わず言葉を詰まらせた
「後悔してへんって思ってくれるならそれだけで今日来た甲斐はあんねん、こうやってな、一つずつ少しずつ何かを知っていくだけで自分にプラスになんねん」
「そうだな・・・・・」
「えっ?!」
まさかの肯定に謙也は穂走の顔を見る
「っ?!」
「そうかもしれない」
そこには今まで見たことの無い優しい笑顔を向ける穂走の姿があった
「君の笑顔が見れた・・・それは少なからず俺にとってプラスだと自覚している」
「えっ?!!」
「さ、また来週も君は俺を連れ出すんだろ?けど憶えておいて 俺はいつも暇というわけじゃない」
「・・・・・・・」
「けど・・・・・」
「ん?」
「君の笑顔が見れるならばまた君のきまぐれに付き合うのも悪くないかもしれないね」
そう言って穂走は駐車場へ歩き出した
*