短編

□お兄ちゃん禁止令:翔謙
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「し・・・・翔太?!」

「・・・・・・・・」


自室へ謙也を強制的に引き入れた翔太はドアに鍵をかける


「え?!お前何しよんねん」

「兄ちゃんらが悪いんや!!!」


「っ・・・」

「ずっと一緒におったんに・・・いきなり兄離れとか言い出すし・・・・・」


「あれは翔太があまりにも俺に引っ付きすぎやからでっ・・・」

「やって幼稚園の頃からずっとこんな感じやったやんか!!」

「幼稚園と今を一緒にすんなや!!」



だんだんと口論になる2人


とそこへ



「謙也!!翔太!!何してんねん!!早よう部屋から出てきんさい!!」


母親が呼びに行ったのであろう仕事を終えた父親が部屋のドアを叩いた


「嫌や!!変な条令取り消すまで兄ちゃんも部屋から出さへんからなっ!!」

「お前は何考えとんのや!!謙也まで監禁して!!!!」

「翔ちゃん早よここ開けてちょうだい」




両親もドアの向こうから必死で翔太を説得する
翔太は聞く耳を持たずに不貞腐れる

そこで謙也はドアの前まで行く

「オトン、オカン」

「謙ちゃん?!」
「謙也!!大丈夫か?!」

謙也は落ち着いた声で言う

「大丈夫やから2人とも下降りとってくれんか?」


「けど・・・」

母親が心配そうに言う




「大丈夫やから、翔太は俺の大事な弟や、ちゃんと話し合ったら揃って部屋から出る

せやから・・・・」

「分かった、翔太のことは謙也に任せる」

「ちゃんと2人揃って下りて来るんよ」

「おお、分かった」



両親は翔太のことを謙也に託して1階へ下りていった








「翔太、」

「兄ちゃんは・・・・」

「ん?」

「兄ちゃんは俺が嫌いなんか?」

「んなわけないやろ、お前は俺の大事な弟や 嫌いなわけがあらへん」

「けど俺に触るなって言うたやん」

「触るなとは言ってへんやんか、翔太が他より甘えすぎなんや、せやから・・・」

「他って何やねん!!俺以外の奴って誰やねん」

「誰って・・・金ちゃんとか・・」

「自分の後輩と弟を一緒にすんなや!!やって俺ら兄弟やんか!!」

「兄弟やからって甘え過ぎてええわけちゃうやろ?」

「やったら・・・昔から俺に優しくすんなや!!兄ちゃんは優しくて自分より俺のこと優先するしオカンに怒られたらかばってくれるし・・・そうやって兄ちゃんが俺に優し過ぎるから・・・優しっ・・過ぎる・・からっ・・・・・甘えたくなっ・・・るん・ゃぁっ・・・」


翔太の怒鳴り声は段々と泣き声にかわり、とうとうその場で泣き崩れてしまった


「翔太・・・・・・」


「兄ちゃ・・ん・・なんか・・・・兄ちゃんなんかっ・・・・・・大っ嫌いや!!!!」



「っ・・・・・・!!」


「大・・・・嫌ぃ・・・・ゃっ・・・ぁっ・・・・・・」



あれほどお兄ちゃんお兄ちゃんと甘えてきてくれた弟からの「大嫌い」の言葉









静まり返る部屋















「・・・・兄・・・ちゃん?」


先に言葉を発したのは弟だった


俯いていた顔を上げて兄を見る




「っ!!!・・・兄ちゃん・・泣いてるん?!」



そこには静かに涙を流す兄の姿があった
思わず駆け寄る弟


「兄ちゃんっ・・・・・」

「ごめん・・・な・・・翔太ぁ」



「っ?!・・・俺が大嫌いやなんて言うてもたから泣いとるん?」

「翔太のせいやないっ・・・・俺がアカン兄ちゃんやった・・・からっ・・・」




翔太は今すぐこの目の前に居る涙を流して震える兄を抱きしめたかった
だが今の自分にはできない・・・・



「っ・・・ごめんなさぃ・・・っぅう・・大嫌いなんて・・・嘘やぁ・・・嘘やもっ・・ん・・・・・」




翔太も一緒になってその場で泣く

「っ?!・・・兄ちゃ・・ん?」


翔太が自分のそばで泣き出したことに気付いた謙也はそっと弟の肩を抱き寄せた


「ごめん・・・・やっぱり翔太はあの翔太やないとなっ・・・・」

「・・・・っうぅ・・・ぁ・・・」

「もうええで・・・・」

「・・・っ?」

「いつもの翔太で、ええねんで」

「兄ちゃんっ・・・・!!!」




翔太は謙也に抱きついた


「・・・兄ちゃんっ・・・・大好きやぁっ・・・」


「翔太・・・・・」

















こうして翔太のお兄ちゃん禁止令は廃止されたのであった。




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