短編

□一緒が良い:翔謙
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ガチャ

ベッドで翔太が泣いているとドアが開く音がした


「翔太ー おるんやろ?
電気くらいつけとけやー」



「にっ・・・兄ちゃん?!」


パチンと部屋の電気が灯され謙也が部屋に入ってきた



「お前何拗ねてんねん オトンもオカンも困っとったで」


「そんなこと言う為に来たんやったら出てってくれや!!!」

「翔太・・・・・」


「兄ちゃんは悲しないんか?!嫌やないんか?!ずっと一緒やったやんか!!!」

布団に顔を埋めながら翔太は泣き叫ぶ


謙也はベッドの前までやって来て翔太の肩に手を置いた

「翔太、顔上げえ」

「嫌やっ!!」

更には耳を塞ぐ始末


「翔太、兄ちゃんとちゃんと話そうや」


返事は無い


「2人の部屋のことやちゃんと俺達で話しあわな」


「嫌や嫌や嫌や嫌や!!話しとうない!!嫌やあああっ!!!」


翔太が耳を塞いだまま全く話し合おうとしないことに痺れをきらした謙也


「翔太っ!!!!!!!」



とうとう怒鳴った



「っ・・・!!!!」


思わず耳を塞いでいた手を外し
謙也を見る


「(兄ちゃんを怒らせてもたっ・・・怒られるっ・・・・・)」





ポンポン

翔太が想像していたことは起こらなくて
逆に頭を2回撫でられた

「やっとこっち見たな翔太」

謙也の顔を見るといつもの優しそうな顔でこっちを見ていた


「兄ちゃん・・怒らへんの・・・・?」


「怒ってほしいんか?」



思わずブンブンと首を横に振る翔太

「ははっ、怒らへんよ」

「っ・・・・」

「あんな、俺かて寂しいんやで?
物心ついた頃からずっと一緒にこの部屋で育ってきたもんな」

「うん」

「せやけどな、翔太も今年から中学生になって来年は俺が高校生になる

いつかはこの家を出て行く時かて来るんや」

「っ・・・・・そんなん嫌やっ」



翔太は思わず謙也の腰で抱きついた


謙也も優しく頭を撫でてやる


「いつまでも一緒の部屋で一緒に過ごすことなんかでけへん、俺もお前も大人になるんや」

「そんなん分かっとる・・・・けど・・」

「うん?」

「けど、兄ちゃんが家出て行くまでは
一緒の部屋がいい・・・・・」

「そうか、それが翔太の意見やねんな?」

「俺、絶対兄ちゃんの受験の邪魔せえへん

でっかい音で音楽も鳴らさん

勝手に漫画も読まへんからっ・・・・・」



兄の腹に顔を埋めて泣きながら話す翔太の肩を引き離し、謙也はベッドから身を乗り出す翔太の目線に合わせてしゃがんだ



「ありがとうな、翔太」

「・・・・兄ちゃん・・・」

「ちょっとオトンとオカンに言うてくるから翔太はここで待っとり」

「え・・・・?」

「大丈夫やから」


そう言うと謙也はポンと翔太の頭に手を置いてから部屋を出て行った





















「・・・兄ちゃん・・・・・」





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