短編

□一緒が良い:翔謙
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忍足家はどちらかというと裕福な家庭で
広い家を持ちここに暮らし始めて早や15年

丁度長男の謙也が生まれたときに
父親がマイホームということで
経営している病院の裏に家を建てた

その2階には2人兄弟の部屋がある。
部屋は沢山あるのに
ずっと2人一緒の部屋で勉強したり
眠ったりゲームをしたりしてきた

のだが・・・・


或る日、ダイニングで家族揃って夕食を取っているとき

「謙也、翔太、そろそろ別々の部屋にしよか」


父親の口から一人部屋の提案をされた


「え?どないしたんいきなり」

先に反応したのは兄、謙也だった


「謙也も来年は高校生やろ、部屋は余っとるしいつまでも2人一緒は狭いやろ?」

「2段ベッドは解体したら普通のベッドとして使えるしお父さんの言うとおり別々にしたら?」


父親の発言に母親も勧める

「うーん・・・静かになるけど、言うても同じ家ん中やしええんちゃう?」

謙也も問題無さそうに賛成をする


「謙也も賛成やな、ほな来週にでもホームセンターに・・・

「嫌や!!!」


まだなにも言葉を発してなかった弟の翔太が叫ぶ


「しょ・・翔太?!」

「嫌なんか?!」


まさか反対されると思っていなかったためか、両親は唖然とする

「俺兄ちゃんと一緒がいい!!別々なんか嫌や!!!」


「翔太、我侭言わへんの」

「謙也は3年生やから受験勉強もせなアカンのや、一人部屋の方が集中できるやろ?」

「せやで翔太、引っ越すわけやないやから」





「・・・・・・っ!!!!」



翔太は途中だった食事を投げ出してダイニングを飛び出した。


「もう、翔太ったら・・・拗ねてもたんやろか」


母親が翔太が落とした箸を拾いながら言う


「俺ちょお翔太見てくるわ」

謙也は自分の分と弟の分の食器をキッチンに運び、部屋に向かった




残された両親はというと



「翔太は昔っからお兄ちゃん子やったからなあ」

「誰に似たんか甘えん坊さんやしねえ」

「俺を見て言うなや」

「ふふっ、それに比べて謙也は面倒見良いしねえ」

「せやけどずっとこのままっちゅうんもアカンやろ」

「そうやねえ」

「まあ、謙也がなんとか説得してくれるとちゃうか?」

「あら、息子を頼りにするん?」

「そ、そういうわけとちゃうけど 翔太は謙也の言うことはちゃんと聞きよるからな」

「まったく・・・」

「どないした?呆れとるんか?」

「ちゃうわ、ウチの子らホンマ可愛いわあって思って」

「せやなあー ま、俺らの子どもやし?」

「もうあなたったらー」














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