妄想小説

□人はそれをストーカーと呼ぶ
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「・・・・おい、黒羽丸はいるか。」

「はい、ここに。」

いつもは『烏』か『三羽烏』なのに、今日は私をご指名とは。
何か重要な用なのだろうか?

「何だ?こいつは?」

そう言って若頭が私に見せたのは、門外秘出、我ら三兄弟の連絡帳代わりにと私が使っていた『若頭観察日記』。
トサカ丸もささ美も何故か自分なりの連絡ノートを作っているが、私はなかなかの出来だと思っている。

・・・・

なにぃいいいいいい!
何故リクオ様があれを?!


落ち着け、若が私を睨んでいる。落ち着くんだ。
そうだ、雪女が若頭に携帯を奪われて何かされた時に、雪女が使った言葉を言えばいいはずだ。
あれで若頭は自らを恥じて顔を赤くして、反省していたようだしな。よし

「もう、エッチです、若。(声真似付き)」

あ、若が凍った。
そうか、あれは雪女の畏を発動させる為の言葉だったのだな。
そういえば、あの時も動きが止まっていた。

「おい、てめぇ。いったいどういうつもりで・・・」

あ、もう回復した。
私は烏天狗だからな。雪女の畏が上手く使えなくとも、当然か。
しかし、ほんの僅かの間でも相手を凍らせることができるのであれば、何かと応用の効く良い技となりそうだ。

「若頭。それは我々の仕事の為の物ですから、お返し願いませんか。」

「『日記』ってあるが?」

「ああ、それはジョークです。」

「はぁ?」

親父殿が俺に、もっと頭を柔軟に働かせる為に、ジョークを交えろと言われたのがこの名前にしたきっかけだ。
カモフラージュにもなる、実用的なジョークだと思うのだが・・・

「と、とにかく、間違った事が書いてあるぞ。」

「どこがですか?」

何か間違ったことが書いてあったのだろうか。
必要とあらば修正する必要があるな。

「俺とつららはまだ将来を誓い合っていねぇ。」

「・・・そうなのですか?」

「ああ、そうだ。」


さて、これは本当と見るべきか、嘘と見るべきか。

若頭がまだ未成年であることを考えれば、誓い合ったといっても有効とはみなされない。
となれば、雪女を狙う輩が焦って手を出す可能性がある。
やりかねない妖に心当たりもあるしな。
それを警戒して嘘を付いている可能性が高い、と見るべきだろう。

そもそも本当であれば、今までの若頭の行動に、不可解な点が多くなりすぎる。
・・・すこし当たりをつけてみるか。

「そうでしたか。私にはお二人は『つがい』のように見えたのですが、勘違いでしたか。」

「な・・・つ、つがい!?」

若頭の顔が真っ赤に染まっている。
ふむ、やはり私の推測で大体当たっているということだな。

「申し訳ありませんでした。今後は、日記の書き方に気を付けます。」

「お、おう。分かればいいんだ。」

よし、日記は回収したし、上手く誤魔化す事も出来た。
我ながらなかなかの出来だな。

おや?立ち去ろうと振り返ってみれば、いつの間にか雪女がいる。
頬を染めている所を見ると、少なくとも最後の所は聞いていたようだ。

「雪女。『名』を聞かれる日が、楽しみだな。」

「っ!!」

すれ違いざまに雪女にだけ聞こえるよう囁いたのだが、まったく、二人とも良く似た反応をしてくれる。
見なくとも解る。きっと顔を真っ赤にして、若頭と雪女は互いを意識している事だろう。


護衛項目が、一つ増えたな。

『雪女の貞操』

他の奴からはともかく、夜のリクオ様から守るのは骨が折れそうだ。



end
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