記念文

□若旦那はメイドがお好き
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「「おかえりなさいませ、若旦那様。」」

「・・・ああ、ただいま。」

豪華な洋風の館に、メイド姿の使用人達。
屋敷に住むのはみんな人間のはずなんだけど、姿は奴良組の面々(ただし人間に見える範囲の者だけ)というからけっこう無茶がある。
妖怪のよの字も無いようなそんな世界の奴良グループ御曹司、それがボク。
・・・ああ、そうか、これきっとボクの夢だ。

そう思って呑気に氷麗のメイド服姿を存分に楽しんでいたのだけど、どうも夢にしてはおかしいと気が付いたのは、当の氷麗のボクに対するよそよそしい態度とか、まぁ他にも色々あるけれどあれだ、氷麗がボクの専属メイドじゃないという時点で絶対違う。


なんだよそれ、氷麗がボク専属じゃなくて母さんの専属だなんて。
せっかくの夢ならメイド姿の氷麗で、現実じゃ絶対してくれないであろうあんなことやこんな事で楽しもうと思ったのに、それもできやしない。
というか、既に過去にそれを実行しようとして、あまつさえ失敗して思いっきり警戒されている設定とか、ありえないから。
しかも最も警戒しているのが氷麗本人ではなく(やはり氷麗は氷麗と言うか、警戒心が薄いのは別の意味で心配だ)、氷麗の幼馴染だというらしいボクの専属使用人の黒田坊(姿は執事)ってのもどうかと思う。

そこは黒羽丸とか、せめて首無じゃないの!?
それに人間のはずなのに「黒田坊」って・・・うん、やっぱりこれ夢かな。こんな夢見るなんて、凄いなボク。


と、噂をすれば影とやら。
せっかく無理を言ってまで氷麗にお茶を用意させて、『氷麗のメイド姿観賞会』を楽しんでいたというのに、どうして邪魔しに来るかな。

「リクオ様、明日の御予定ですが。」

「明日は休日だろ。友達と遊びに行くんだから、そこまで管理しなくていいよ。」

黒田坊の執事姿というのは結構・・・いや、かなり似合っている。
そういや奴良組1・2を争うイケメンだったっけ?
そういう感じじゃなかったからなぁ。

「申し訳ありません。ですが万が一の為に行き先や御予定を把握しておく必要がありますので。」

「携帯で居場所ぐらい分かるんだろ。」

「その携帯をわざとスポーツセンターのロッカーに置いてゆき、姿をくらませたのはどなたでしたかな。」

「あれ?そんなことあったっけ?」

さすがボク。色んな手を使ったんだな。
今度は屋敷の誰かの携帯とすり替えてみようか。

「リクオ様、そういうわけで明日は私もお供させて頂きます。」

「ちょっと待ってよ、それだと友達同士の集まりになんないだろ。」

「ですが、私もお役目がありますので。」

あーもう黒田坊なんだから少しぐらい融通利かせてくれてもいいじゃないか。
・・・ん?まてよ。黒田坊なんだから、逆に上手く利用できるかも。

「じゃ、せめて氷麗も一緒にしてよ。そしたら男女の数もちょうど同じになってつり合いが取れるからさ。」

「へ?私もですか?」

「なるほど・・・それは良いかもしれませんな。」

流石は遊び好きな黒田坊。ボクの提案を聞いた途端、目の色が変わったね。

「黒田坊も納得しないでよ!私にだって若菜様の身の回りのお世話という大切なお役目があるのよ!」

うう・・・母さんの専属なんだからそう言うのも仕方がないとは分かるけど、氷麗が自分より他の誰かを優先するというのは、その相手が母さんであってもやっぱり堪えるなぁ。
まぁ、なんだかんだ言っても氷麗だってたまには外で遊びたいだろうしね。
黒田坊が遊びに行く事自体を反対しないのであれば、どうとでもなりそうだ。よしよし、明日が楽しみだな。
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