記念文

□清十字団座談会
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もうすぐリクオ達も卒業を迎える頃、これを最後にと清十字団の面々が理科実験室に集まっていた。
清継も生徒会長を辞めたため生徒会室が使えなくなってしまっていたのだが、数少ないリクオの理解者である横谷先生が、理科実験室を清十字怪奇探偵団の活動拠点として提供してくれていたのだ。

進学先も様々な一同は、卒業後もまた会合を開こうと約束していたのだが、それでも中学最後の集まりなのだからと、今までの思い出を尽きることなく話し続け盛り上がっていた。
とはいえその話題の中心は、やはり中学1年の頃の、あの恐ろしくも今となっては楽しい昔話となっている、奴良組の抗争についてであった。
あれだけの大事件の連続ともなれば、話題の中心になるのも当然といえば当然なのだが、リクオはこの話題になると、どうしてもだんだんと頬が引き攣ってくる。

「ところでさぁ、あの頃は不思議に思っていたけど・・」

(来た!)

この手の話題になると必ずといっていいほど出てくる、最後の絞めとして決めているんじゃないだろうかとさえ思っていしまう前振りが巻の口から出てきた事に、リクオの顔が強張る。

「氷麗ちゃんって、側近だったから一緒に居たんだよね〜。」

「まぁ、それだけじゃないみたいだったけど?」

ニヒッと悪魔の笑みを浮かべているようにしか見えない巻と鳥居の視線は、冷や汗を流し始めたリクオの顔を楽しそうに捉えていた。

「い、いえ、そんな何もおかしな所なんてありませんよ?」

「あるある、そりゃもう色々。」

氷麗、もう少し学習して。そんな頬を染めてあからさまに動揺したら、かえって煽るだけだから。と切実にリクオは思うのだが、考えてみれば自分の悪戯に最も簡単に、そして何時までも引っかかり続けた彼女に、それを期待するのは無茶というものだろうかと思うと溜息しか出てこない。

確かに他人から指摘されればおかしいと思えるような事を何度もしていたのは間違いない。
あれを人目も気にせずごく自然にやっていた自分は、何と鈍く愚かなのだったのだろうと、この話題になるとリクオはいつも後悔していた。

「巻さん、その話しはもう止めて、高校の事とか話さない?」

「却下。」

「うう・・・」

ああ、このまま何時ものような展開になるのかとリクオは肩を落したのだが、何時もはこの話題に加わる事の無かった人物が、とんでもない事を言ってきた。

「ボクはてっきり許嫁だと思っていたんだけどね。側近で納得したよ。」

「「「は?」」」


え?清継くんがこの手の話題に入ってきた?
いや、それより今何て言った?


あまりの事に全員が完全に固まってしまった中、何時ものようにマイペースな清継は、やはり何時ものようにさも当然のように言葉を続ける。

「君たちは何を見ていたんだい。まず毎日奴良くんのお昼を作って来ていたじゃないか。」

「アー、まぁそれは私たちも、アレ絶対付き合っているって思ってたし。」

「そういえば、毎日教室まで持ってきていたわよね。リクオくんも嬉しそうにしてたし。」

「屋上で二人きりで食べてたみたいだったよね〜。」

「ふ、二人じゃない事もあったよ?」

「ええ、青や河童がいることきだってありました。」

慌てて二人だけでは無かったと・・・いや実際は二人だけの方が多かったし、特に2年生になってからは気を利かせるようにと氷麗に内緒で命令までして、二人だけになる回数を増やしてはいたが、そこまでは知らないだろうと取り繕ったところ、鳥居が猫のような目を細めてニヤリと笑いかけてきた。

「おや〜、確か聞いた話じゃ、二人きりにしろって言ってたようだけど?」

「だ、誰から聞いたの!?」

「そりやもちろん黒・・・あ、内緒だっけ・・・えーと、噂で。」

情報源はあいつか。とりあえず後で締めよう。そう心に決めたリクオの隣では、氷麗が驚きの表情でリクオを凝視し体を震えさせていた。

「リクオ様!?そんなの私聞いていませんよ!?」

「いや、だってほら、河童は気を利かせてくれるのにさ、青とか他の連中って仕事熱心だったから、少しは休んでもらおうと思って。護衛は氷麗がいれば問題ないでしょ?」

「いいえ、食事時というのは隙が生まれやすいのですから、護衛が多いに越した事はありません。」

「二人きりになりたかっただけなんだけどな〜。氷麗は嫌だった?」

「そ、そんなわけないじやないですか!私も二人きりの方が良いに決まっています!」

「そう言ってくれて嬉しいよ。」

「「お前らいいかげんにしろ。」」

パシーンと何処から取り出したのか、いつの間にか巻がその手に持っていたハリセンが、人目もはばからず氷麗に抱きついたリクオの後頭部に炸裂する。
惚気が始まると終わらないことを学習した二人が、対策として常備するようになった代物だ。

「巻さん!なんて事するんですか!」

「はいはい、氷麗ちゃんも落ち着いて。」

「仲が良い事は良いことじゃないか。別に今更なんだし。」

「清継〜〜、お前は少しは気にしろよ。」

「全く気にしていなかった訳じゃないよ?
 許嫁だと思ったのだって、一番の決め手は二人が同じ家に住んでいた事だからね。」

「「「は?」」」

清継の爆弾発言に、本日二度目のフリーズが一同に訪れた。
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