記念文

□サンタがやってくる
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既に日の落ちた奴良邸の庭に、ちらほらと雪が振っている。
思いも寄らない大寒波に、人々は凍えそそくさと家に帰り、リクオもまた大人しく部屋にこもっていた。

「ところで氷麗、今日はクリスマスのはずだが。」

「はい、ご安心ください!腕によりをかけて御馳走やクリスマスケーキをご用意いたしております!」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「あ、プレゼントですか?もちろんご用意していますとも!」

氷麗のぺかーっと明るい笑顔とは対照的に、既に夜の姿となっているリクオはどこか不満げだ。

「そうじゃねえよ。
 もうすぐクリスマスの宴会も始まるってぇのにだな、何でそのままなんだ?」

ぶすっとした顔で言い放ったリクオの質問の意図が分からず、つららは頭の上に?マークを幾つも並べる。
一体何の事でしょうかと氷麗が尋ねると、リクオはやはり不機嫌そうに答えた。

「だから、なんでサンタコスをしていないんだって聞いてんだ。」

「は?・・・って、ええ〜〜〜〜〜!?」

確かに今日はクリスマスだ。
だが、何故それで自分がサンタクロースのコスプレをする理由になるのか、氷麗には全く理解できなかった。

「ちょ、ちょっと待って下さいリクオ様。
 それなら青や木魚達磨様に頼まれた方が宜しいかと。」

「そうじゃねぇんだよ、俺が求めんてのは子どものイベントじゃねぇ。
 ほれこの雑誌見てみろ。巷じゃミニスカサンタコスなんて当たり前だぜ。
 なのにどうしてお前はしねぇんだ。」

もちろん大嘘である。
が、そんな事など露と知らない氷麗はそれが当り前なのだと勘違いし、それでも大慌てで手を振り回して全力で否定した。

「駄目です!
 だいたいなんですかその格好!足がほとんど丸出しじゃないですか!」

「それが良いんだよ。」

「良くありません!
 リクオ様の前でそんな格好したら、『むらり』とか訳の分かんない効果音が出て、とんでもない事になるに決まってるじゃないですか!」

「おお、よく分かってんな。
 だが甘いぜ。今日はクリスマス・イブなんだから、お前がどんな格好をしていようとも、『むらり』が出るのは免れねぇよ。
 どうせ同じなら、サンタコスした方が俺が楽しめるってもんだ。諦めてこの衣装を着な。」

無茶苦茶な事を言いながら、リクオはいつの間にか用意していた女性用サンタコスチューム(ミニスカ)を、氷麗の前へと突き出す。

「何ですかその屁理屈は!」

「ああそうだ、言っとくが俺の前以外でその格好はすんなよ。厳禁だ。」

「誰がしますか!というかそんな格好しません!」

「観念しな。のこのこ俺の部屋に一人でやってきたのが運の尽きだぜ。」

「ヒィィィィイイイ〜〜〜〜〜!!」



この後、無理やりサンタコスをさせられた氷麗が無事に自分の部屋に帰れたかどうか、それを知るものは誰もいない。



end
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