妄想小説
□ムッツリスケベ?
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それは、四国妖怪が現れ護衛が強化されたその日、満員電車の中で起きた。
「リクオ様もいつまで挟まっておられるのでしょーかぁ!?」
「違うんだよつらら!」
毛倡妓の胸に挟まっていたリクオに、つららが声を荒げている。
それを慌てて言い訳する様を見て、首無が誰となく呟いた。
「うーん、昔デート中に、給仕をしている彼女に会った時の事を思い出すね。」
「え?デート中の彼女が給仕?」
首無の呟きに、河童が不思議そうに答える。
その言葉を聞き逃さなかったリクオが、つららの矛先から逃れるために、その話に飛びついた。
「どういうこと?もしかしてそれって妖怪?」
それと同時に、後ろ髪引かれる思いで毛倡妓の胸の狭間から脱出し、首無の正面になんとか体をねじ込む。
「いえ、人間ですよ。」
「え?でもじゃあなんでそんなことが・・・」
「ああ、そういうことか〜。首無ってほんと、女たらしだよね。」
「え?え?」
河童はすぐにどういう事か理解したようだが、リクオにはまだ何のことか解らず、首無と河童の顔を交互に見つめる。
「首無、あんた『別の』が抜けてるわよ。
でもさぁ、首無でも慌てる時期があったんだねぇ。」
「そりゃまあ、ずいぶん昔の話だからね。」
「なんでぇ、結局自慢話じゃねーのか?」
そこに毛倡妓と青田坊まで加わり、やがて昔話に花を咲かせ始めた。
ちなみに、解説すると『デートで店に入ったところ、そこで給仕(ウェイトレス)をしていた別の彼女に会った』という事である。
そんな中、一人昔話に参加もせずに、つららは自分の胸を見ながらぶつぶつと呟いていた。
「私だって、元の姿なら多少は・・・出来ない事もないのよ。
着物だから見た目分からないし、そのままじゃ出来ないだけで、これでもけっこう・・・。」
なんとも怪しげな発言である。
みんなの話に入っていけないリクオが、そんなつららにふと気が付いた。
「どうしたの?つらら。さっきからぶつぶつ言って。」
「ひゃあ!な、なんでもありません!
雪でかさ上げしようかなーなんて、ちっとも思っていませんよ!!」
「何をかさ上げするのさ^^;。」
リクオには何の事だか判らなかったのだが、つららは自分の考えていた事に恥ずかしくなり、顔を耳まで真っ赤に染める。
「うぐ・・・、気になさらないで下さい!
本当に何でもありませんから!」
「つらら、声が大きいよ。」
「は、はい、すみません・・・。」
顔を赤らめたと思ったら、今度はしょぼーんと落ち込むつららの顔変化に、リクオは思わず吹き出してしまう。
「もう、なんですかリクオ様。笑わなくてもいいでしょう?」
「アハハ・・・ごめんつらら、なんだか可笑しくって。」
そんな二人を、他の護衛達は温かく見守っていた。
「青春だね。」
「ん〜。」
「雪でかさ上げねぇ。確かに雪女じゃ、やっても気付かれないわね。
上手い事考えるじゃないの。」
「いや、そこは感心する事じゃないと思うよ。」
「ふむ。雪女は、若は大きいのが好きだから悩んでいる、という事だな。」
「雪女も大変だね〜。」
「拙僧も大きい方がいいからな。」
「あんたの好みなんて、関係ないでしょ。」
いつの間にか近くまでやってきていた黒田坊の一言に、毛倡妓が鋭くツッコミを入れる。
それに乾いた笑いを浮かべながら、首無がまぁまぁと間に割って入った。
「はは、青に黒。別に若は大きいのが好きだ、と決まったわけではないだろう?」
「そだね。オイラが今度、確かめてみよっか?」
「「どうやって?」」
突然の河童の提案に、青田坊が『どうやってそんな事を?』と不思議な顔をしながら、そして毛倡妓が『それは面白そうね』と好奇心に目を輝かせながら、同時に河童に聞き返す。
「若の部屋に、どういうタイプの本があるか探してみるってのはどう?」
「それは面白そうだが、二人の目を盗むのは大変そうだな・・・」
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その実、単にリクオとつららの話題で遊んで、楽しんでいるだけの護衛達であった。
end