妄想小説

□闇に映える白い月
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「あ・・・綺麗な月だな・・・」

部屋で勉強をしていたら、隙間窓から月が見えてきた。
何故かもっと良く見たくなって、羽織を着て縁側にふらりと出る。

満月に近い、真っ白な月。
この寒い夜空に良く映える、凍えるような白い月。

冬の夜空は、月の白さをいっそう際立たせているような気がする。


・・・・ぶるっ

「うう、さむい・・・」

しばらく見とれていたら、さすがに寒くなって部屋に戻った。
そういえば、今夜から明日にかけて寒波が猛威をふるうとか。

「大晦日だっていうのにねぇ。」

そういえば清継くんが、2度参りに行こうと皆を誘っていたっけ。
もちろん曰く付きの神社だったわけだけど、今回は断る事にした。
なんせ向かうは苔姫の神社。
安心だというのもあるけれど、女に目のない夜のボクがしゃしゃり出て、苔姫と話し始めたりしたらかなわない。
そうならなかったとしても、苔姫の方がうっかり話しかけてくることもあり得る。
そんなわけで、ボクとつららだけ参加しない事になった。
カナちゃんがつららの方を訝しそうな目で見ていた気がするけど、気のせい・・・だよね?



「・・・そうか、つららだ・・・」

なんとなく見とれてしまった、白い月。
寒い夜空が良く似合う、白い月。
そう、それはまるで彼女のよう。

かくれんぼで遅くなってしまったあの時、夜の闇に良く映えた白い肌。
あの戦いの時も、あの白い肌だけが、何も見えぬはずの闇の中で見えたような気がしたのを、ボクも覚えている。


「・・・ずるいなぁ。」

白い月が映えるのは、深い夜の闇の中だけ。
満月の月を存分に楽しめるのも、真夜中の間だけ。
きっと白い月が満面の笑みを見せるのも、夜の闇に対してだけなんだろう。
あの白い月は、夜のためにある。


「・・・勉強の続きでもしよっか。」

リクオはおもむろに勉強を再開した。
このまま考え続けると、嫌な自分になってしまいそうだ。
だから、勉強をする。
少なくとも勉強に集中している間は、余計なことを考えずに済むのだから。


白い月は、そんなリクオを窓の隙間から照らし続けていた。


end
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