作品置場

□奴良組v.s.雪女組
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「・・・どうして、どうして氷麗と戦わなきゃならねぇんだ!」

「なら、諦めて私達の下僕になりなさい。そうすれば争わずに済むわよ。」

「っ!!」

百鬼同士が互いに牽制する最前列に、リクオとつららが互いに向き合っていた。
そう、並んでいるのではなく、向き合い、対峙していた。

リクオの背後からは、『そんなバカな事が出来るか』『ふざけるな裏切り者』『思い直してくれ』と様々な声が巻き起こっている。
それらの声も含めて、氷麗は冷ややかな視線をリクオに投げかけていた。



事は雪女組が水面下で着々と進めていた謀反にあった。
雪女組は自分達の畏を最大限に活用し、徐々に各地の貸元を籠絡し、味方につけていたのだ。

特に大きかったのが、貸元の中でもリクオに近しいと思われていた、関東大猿会の猩影や牛鬼組の後を継いだ牛頭丸を味方につけた事だろう。
奴良組が雪女組の計画に気が付いた時には、すでに奴良組傘下の貸元達の1/3ほどが雪女組に付き、また独眼鬼組の一ツ目を始めとして多くの組が『中立』を決め込んでいた。

そして時が経てば経つほど不利になると判断した奴良組が、既に勢力的には奴良組を越えた雪女組に対し、決戦を挑んだのであった。




「さあ、どうするの?下僕になる?」

「ああ、そりゃいいな。よし、俺は氷麗の下僕になる。」

「へ?そ、そんなあっさり・・・」

リクオがあまりにもあっけらかんに言うので、氷麗はもちろん、互いの百鬼達もまた面喰らいざわつきだす。
リクオの方はと言うと、そんな周囲のざわつきもどこ吹く風と、何時ものようにニタリと笑みを浮かべながら氷麗との距離を詰めていく。

「ただし、条件がある。俺を氷麗の婿にしてくれ。」

「はぁ?ちょっと待ってくだ・・待ちなさい。どうしてそうなるのよ。」

「そりゃもちろん、政略結婚ってやつだ。それなら皆納得すんだろ。
 別に下僕と結婚しちゃいけない理由なんざねぇしな。」

「そ、それなら・・・あ、いやその、あの・・・」

氷麗は自分の心の中に閉じ込めていた気持ちを掘り起こすリクオの言葉に狼狽する。
だが敵対する者同士となった以上、今更昔のように戻れるわけはないのだと自分に言い聞かせようとしたのだが、よくよく考えてみればリクオが下僕になるわけなのだから昔に戻るという事でもないのだし、自分は雪女組の若頭なのだからつり合いも取れるし、何も問題ないばかりか雪女組にとっても良い話ではないだろうかと思ってしまう。
いやでもやはり・・・と悩んでいる内に、いつの間にかリクオが氷麗の目の前まで来ていた。

「雪女組は俺を下僕に出来て満足だし、俺も氷麗と結婚できて大満足。万々歳じゃねぇか。
 それに他の組の貸元達が雪女達にやられたように、俺だってもうとっくの昔にお前の畏の虜になってんだぜ。
 その責任も取ってもらわねぇとな。」

そう言ってリクオは氷麗の手を取ると、その甲に口づけした。
思考を吹き飛ばしてしまうリクオの言動に、氷麗は顔を真っ赤にして慌てふためく。
その姿は敵対し冷徹な眼差しを向けてきた氷麗ではなく、奴良組に居た頃の氷麗そのものだ。

リクオはじっと氷麗を見つめながら『さあ返事をしてくれ』と答えるよう詰め寄れば、もはや氷麗には頷く事しか出来なかった。

「よし、お前等今の見たか!
 俺は氷麗の婿になり、それを以って奴良組は雪女組の傘下に入る!」

リクオの放つ高らかな宣言に、下僕達は信じられないとざわめき始めた。

「なんだ、信じられねぇようだな。
 ・・・なぁ、氷麗。俺がお前のモンだって事を示す為に、皆の前で口吸いしちゃどうだ?」

「な、何を言っているんですか!?」

「そりゃ雪女と口吸いするってこたぁ、俺の命を何時でも氷麗が奪う事が出来るって事だ。
 つまり、命を預ける事ができなきゃ、口吸いできねぇ。そうだろ?」

「それは確かにそうなりますが・・・」

「じゃあ問題無しだな。」

「ちょ、ちょっと待っ・・ムグッ」

リクオのペースに乗せられ以前の口調に戻ってしまった事も忘れた氷麗の口を、リクオが強引に塞ぎ込む。
皆の見守る中、じっくりと口付けを堪能された氷麗は、腰が砕けてしまいそのままくたりとリクオへともたれかかった。

「リクオ・・・様・・・」

「なんだ、言葉使いが昔に戻ってるぜ。氷麗様。」

「もう・・・」

楽しげなリクオの声に、氷麗は潤んだ瞳でリクオを見上げる。
じっとそのまま抱き合いながら、二人は見つめ合っていたのだが・・・

ムラッ

なにやら怪しげな気配に氷麗はハッとした。

「え?何?」

「よし、ヤるぞ。」

「はぁ!?何を!?」

先ほどとは打って変わってギラついた目をしたリクオに、氷麗は本能的に強い危機感を感じる。
とっさにリクオから離れようとしたのだが、力強く抱きしめられ身動きが取れない。

「もちろん、俺がお前のモンだってことを証明する事だ。」

「そ、それはさっきしたでしょう!?」

「いいや、あれだけじゃなまぬるい。
 だいたい今までどんだけ我慢してたと思ってんだ。もう我慢できねぇ。
 いまヤる、ここでヤる、さっさとヤるぞ!」

「きゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」





もちろん全力で周囲に止められ、未遂に終わりました。






その後、年中無休24時間やたらと無駄に仲睦まじい氷麗とリクオの姿が雪女組で見られるようになり、誰もがウンザリしたという。
そして日本一の組へと成長した雪女組であったが、数年後には結局リクオが主導権を握るようになったらしい。


END
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