妄想小説2
□お返し騒動
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リクオが中学生となり初めてのホワイトデーを迎え、『良い奴』であるリクオは多くの義理チョコを受け取っていた為、そのお返しに大忙しであった。
「はい、これお返しのチョコレート。」
「・・・あ、ありがと。」
「じゃあボクはまだ配る所があるから。それじゃあ!」
「う、うん・・・」
唖然とした顔でチョコを受け取る隣のクラスの子に爽やかな笑顔を向けてから、リクオは氷麗と共に次の女の子の所へと歩み寄り、氷麗が紙袋から取り出したチョコを受け取ると、それを手渡した。
そう、氷麗は何時ものようにリクオを手伝い、多量のお返し用チョコの入った紙袋を持って後についてきていたのだ。
「このクラスはこれで終わりだったよね、氷麗。」
「はい、リクオ君。次は4組です。まだまだありますね。」
「アハハハ・・・悪いけど、もう少し手伝ってくれる?」
「もちろんです!」
引き攣った笑顔で「ありがとう」と言う女生徒や、信じられないものを見たという顔をしている男子生徒達をしり目に、二人は1年3組の教室を後にした。
それをじっと眺めていた二人・・・巻と鳥居は、暫らくポカーンと口を開け、やがて互いに顔を見合わせた。
「あれって、わざと?」
「どうだろ?見た感じ、氷麗ちゃんの方は何も考えず何時も通りって感じだけど。」
だよねぇ、と鳥居が相槌を打ち、二人揃ってうんうんと頷く。
「やっぱり奴良の企みかなぁ。」
「あいつ、時々何考えているか分からないっていうかさぁ・・・腹黒く感じない?」
「うんうん、それ言えてる〜。」
本人が聞けばきっと顔を引き攣らせながら色々と言い訳をするに違いない、というような噂話に、巻と鳥居は授業が始めるまで花開かせていたという。
どうしてリクオのホワイトデーのお返しを氷麗が手伝う事になったのか、それは登校したばかりの生徒用玄関での出来事だった。