story

□はっぴーニューイヤー
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初詣で(賽銭など)について間違った表現がありますが、あくまでフィクションです。
許せる方のみどうぞ。
















「おい、初詣でとはなんだ?」

それはヒルダの一言で始まった。















「さみぃ…」

「冬なのだから当たり前だろう」

「そうなんですけどね!?」

除夜の鐘が少し遠くで聞こえる。

周りは人、人、人。

それならばもう少し熱気で暖かくなってもいいと思うのだが、マフラーを首にぐるぐる巻いていても寒い。


「だから来たくねぇって言ったのに」

「坊ちゃまのご意思だ。仕方ないだろう」

「ダーッ」


元はといえば古市が初詣でを美化して話すからベル坊がその気になっちまって…。よし、今度殴っとこう。…あ、でもあいつ今頃オッサンと二人で仲良く初詣でしてんだろうな。


『ふ、古市殿』

『何?』

『マフラー編んできたのでその、是非、一緒に…』

『ふっ、仕方ねぇな』




なんてことに…。



………。

……軽く殴るくらいにしといてやろう。



「何を考えているのだ」

「え、いや、古市とオッサンが」

「アランドロン?」

「ああ、大変だなーと」

「?」

「いや、いいんだ気にするな」


徐々に進んでいく人の波に乗って俺たちも進んでいく。

しばらく進んだところでベル坊が声を上げた。


「どうしたんだ」

「ダー!ダーッ!」

「あれを見ろ?」


ベル坊が指差す先にはもちろん人がたくさんいて賽銭箱があるだけで…


お賽銭?


もしかして…


「お賽銭やりてぇのか?」

「ダッ」

「男鹿、賽銭とはなんだ」

「賽銭…そりゃ、あれだ、あれ。神に金やって代わりに願い叶えてもらうんだよ」


「ふむ、悪魔の契約のようなものか」

「お、おう、たぶん」


ん?
でもこいつらが賽銭やったら、悪魔が神に祈るってことか?
悪魔が…?
魔王の子が…?


「何をぶつぶつ言っているのだ」

「あ、声に出てたか?」

「ああ。それにしても神も大変だな。こんなにたくさんの人間と一度に契約するなんて」

「あー、神はそこらへんパーッとやんだろ。神だから」

「そういうものか?」

「おう」


俺たちの番が来て、当然のようにお金を持って来なかった二人の分も一緒に小銭を三枚取り出す。ただでさえ軽い財布がさらに軽くなった。名残惜しく小銭を見つめた後二人に一枚ずつ渡す。



「これを賽銭箱とやらに入れればよいのか?」

「おう」

「ダ、ダーッ」

「坊ちゃまも気合い十分でいらっしゃる」

「フーッ!」

「賽銭ってそんな気合い入れるもんだったか?…ま、いーや」

「ダー!(せーの)」


ベル坊の掛け声とともにカランカランと三枚の小銭が箱の中に落ちていった。


拍手して手を合わせる俺に倣い二人も祈る。…俺も合ってるかわかんねぇけど。大事なのは気持ちだ、うん。






とりあえず、今年もこいつらと楽しく暮らせますよーに。






そう願ってカラカラと鳴らした。








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