戯言/人間シリーズ
□クリスマスの2
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良い子のみんな、こんばんは、戯言遣いだよ!
今日は僕がサンタさんになってみんなにプレゼントを配りにいくよ!
………違う、こんなの僕のキャラじゃない。
そんな僕の現在の格好は真っ赤な帽子に真っ赤な服。もれなくふわっふわの綿毛もついてある。いわゆる"サンタさん"の格好だ。女装ではないのでもちろんズボン。
なぜこんなことになっているのかというと、それは小一時間程前の哀川さんと僕の会話から導き出される。
…
……
………
「いーたんよー最近玖渚ちんとどうよ?」
「はい?」
「だーかーら!玖渚ちんと何か新しい進展でもないかってきいてんだよ!!」
「げほっ…な、ないですけど…あとヒールでお腹を蹴らないでください」
「は!?何やってんだよ!!このヘタレ」
「………………」
「あーもう仕方ねーから今日はクリスマスだしなんかプレゼントでもしてみろや」
「あ、それはいいかもしれないですね。例えばどのようなプレゼントを?」
「んーたっぷりクリームを体に塗りたくって『僕を食べて』とか」
「いや、それ玖渚ドン引きするじゃないですか。聖なる夜に何させる気なんですか」
「ほら、聖なる夜は性なる夜って言うじゃねぇか」
「いいますけども………ってそのプレゼントだと僕が食われる…」
「それもそれでいいと思う」
「よくないです」
………
……
…
結局、哀川さんの手によって無理矢理サンタ服を着せられ(女装じゃなかったのは意外だったが)半ば強制的に玖渚のマンションまで出向く羽目になった。
警備員に奇異の目で見られながらも自動ドアからマンションの中に入る。煙突もないし仕方ないよね。入口からでもいいじゃない。
「友ー、友ー?」
プレゼントをあげる子供の名前を叫びながら探すサンタ。なんとも新しい。
配線をかき分け、ディスプレイを避けて右往左往していると
「うにー、ここだよー」
と聞き慣れた、澄んだ蒼の声が聞こえた。
声のする方へ向かうとフライドチキンを食べながらモニターに向かっている玖渚の姿があった。
どれだけ器用なんだこの娘は。
「やっほーっ!いーちゃんっ!めりーめりーくりすますなんだよーっ!いーちゃんが僕様ちゃんのところに来てくれたことが最高のプレゼントぉ!!」
テンション高っ。
いや、いつも高いのだけど。
と、そこで作業が終わったのか、休憩なのかはたまた僕の顔を見るためか、玖渚は僕の方へ勢いよくくるりと向きを変えた。
「いーちゃん!めりーくりすまっ…………………どしたのその格好………」
玖渚嬢、さげぽよのようだ。ていうかさっきのテンションどこいった。
サンタ服でこの反応とは…。クリームを体に塗りたくってきた日には玖渚に縁を切られるかもしれない。おぉ、怖い怖い。
「良い子の友にプレゼントを届けにね」
我ながらこの台詞はかっこよくないか?
「………………………」
沈黙?え?酔いしれて黙り込む程かっけよかった?え?照れるぅ。
「………………………フ」
「!?」
何今の。
「それはそうといーちゃ…プフッ!!何かプクスッ…プレゼント………クスクスッ」
「やめて、もうやめて、笑ってくれ。いっそ笑ってくれいや笑ってください」
「それはそうといーちゃん、僕様ちゃんにプレゼントがあるってなんのことかな?」
「あ、あぁ。ええと…」
背中に抱えていた大きな袋からごそごそとブツを取り出す。
「お前は大概のものは買えるだろ?だから」
「うにうに?」
期待を膨らませた瞳で僕を見る玖渚。
「こんなものを用意してみました」
「……………!そ、それは」
「いらなかったか?」
「うぅん!!うにー、ありがとうなんだよ!!いーちゃん!僕様ちゃんすっごく嬉しいな!!」
喜んでくれる玖渚。
僕も自然に顔が緩む。笑いはしないけれど。
「んー僕様ちゃんからは何をプレゼントしようかな」
「別にいいよ、そんなつもりであげたわけじゃないし」
「いーの!!僕様ちゃんがあげたいの!!」
「なら別にいいけど…」
「じゃあ僕様ちゃんからは肩叩かせてあげる券を進呈しよう
「………………」
叩いてくれないのかよ。
そんな感じの会話をその夜はずっとしていた。
なんだかんだあったけど
刺激的な何かはなかったけど
聖なる夜はとても素敵な物となった。
あ、プレゼントの内容は想像に任せる。