フリースタイラーの変遷

□アレスの天秤編
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雷門の服部が立ち止まって、彼はフィールドのど真ん中で印を組み始めた。

在、皆、前、臨の順で印を組んだ後、服部はじっ、と白恋中のベンチを見つめた。

『あの子、忍者のコスプレしてるだけじゃなかったんだね』

黒い頭巾を被ってるのは伊達じゃないって事を見せつけるように、服部は白恋中のタクティクスを見破ってチームメンバーに指示を出した。

万作、岩戸、日和の3人が服部の指示通り左へ向かえば、白恋中の面々はボールを持ったなえちゃんを先頭に左側へ寄り、かち合った。

対面なら初心者にはさすがに負けない。
万作がなえちゃんからボールを奪い取り、氷浦へとパスを出した。

受け取った氷浦が前線へとボールをドリブルして進めば、させないよとその後ろに吹雪が追いついた。

さっきまで、なえちゃんの隊列に居たというのに追いつくのが速い。

《おっと!ここでクールプリンス対決!!》

実況も盛り上がっているし、観客席の女の子達もキャーキャー言ってる。
さすが雪原のプリンスと氷の微笑だ。

「明日人!」

吹雪に完全に追いつかれる前に、氷浦は必殺技を使った。

「氷の矢!!」

アーチを描いた氷の槍が、稲森に向かって飛んでいく。
それを受け取った稲森は、ボールを高く蹴り上げ、自身も飛び上がった。

「シャイニングバード!!」

閃光を放つ鳥が真っ直ぐ白恋中のゴールに向かい突き刺さった。

《ゴーーーール!!稲森が決めて雷門が1点差に詰め寄る!》

これで3-4。

そこから更に雷門の快進撃が始まった。

再開のキックオフから直ぐになえちゃんを中心に進む白恋中だが、ブロックサインを見破った服部がなえちゃんからボールを奪い駆け上がる。

そして服部はボールを上に蹴りそのボールが落ちるまでの間に素早く印を組んだ。
臨兵闘者皆陣列在前、それぞれの印を組み合わせて彼は最後に大きく手のひらで地面を叩いた。

「忍法ガマガエル!!」

蛍光ブルーの大きなカエルが現れて、服部はその上に飛び上がり、縦回転をしながらボールを蹴り落とした。

カエルのようにピョンピョンピョンピョンと飛び跳ねるそのボールの機動に惑わされ、白恋中のキーパーが迷っているうちに、大きなカエルがボールをゴール内へ叩き入れた。

《雷門ついに追いついた!トリッキーなシュートを決めたのは──》

『忍者、服部半太、か』

「戦国伊賀島とはまた違った忍者ですね」

西蔭の言葉にうん、と頷く。

『しかし先日の忍者は疲れたな……』

「そういえばもの凄くガンつけられていましたね。たしかアイツは…、霧隠才次といいましたか……」

ああ、と野坂が頷く。

「梅雨さん、去年何か彼にしたんですか?」

『んー、どうだったかな。なんか言って怒らせた気もするけど覚えてないや』

「それが彼を余計にイラつかせたのでは?」

だから試合中もあんな突っかかってきたって?

『まあおかげで彼が個人プレーする所もあって、倒しやすかったでしょう』

「ふ、そうですね」

さて、と、フィールドを見直す。
残り僅かだが、白恋中は先程と同じようになえちゃんを先頭に切り込んできた。
もうその方法は見破られているのに、と思ったが、何やら雷門側は困惑したいる様子だった。

さっきまで見破っていたはずの服部が指示を出さない。
それは、白恋中側のベンチにいる監督が、さっきまで出していたブロックサインを、辞めてしまったからだろう。
解読は暗号あってこそだ。

指示なしの連携でゴール前までたどり着いた白恋中は、染岡がなえちゃんにボールをパスし、いくで!と、なえちゃんはボールを蹴飛ばした。その先を吹雪兄弟が行き、ボールを氷結させて行く。そこになえちゃんも飛び込んだ。

「「「トリプルブリザード!!!」」」

ボールは真っ直ぐ雷門ゴールへ向かっていく。

「俺たちのブリザードに飲み込まれろ!!」

その言葉に、雷門のゴール前に立つのりかちゃんがハッとしたようすだった。

「まだ、未完成だけどこの技にかけるしかない!」

そう叫ぶ彼女に、雷門の面々が次々と、のりかー!!と叫びかえす。

のりかちゃんは頭上に腕でバッテンを作って、それを開くように大きく腕を振り下ろした。
そうすればゴール前に海が広がった。

「マーメイドヴェール!!」

ピンクのヴェールがボールを包み込みそれを上に打ち上げた。

「よし!」

重力に従って落ちてきたボールをのりかちゃんはがっちりと抱きとめた。

「やったぁ!」

「そんなぁ」

喜ぶのりかちゃんと反対に、なえちゃんは地面にへたり込んだ。

「明日人!!」

その隙にのりかちゃんが思いっきり稲森へと、ボールを投げつけた。

「落ち込んでる暇なんてねえぞ!」

戻れとアツヤが声をかける。

「そうだ!チャンスはまだある!」

そう叫んだ染岡が明日人からボールを奪った。

「士郎!」

染岡から士郎へのパス、そこからドリブルで駆け上がる彼を見て弟のアツヤが誰よりも早く前線へ向かう。

「最後に決めるのがエースストライカーだ!!」

「ってことはウチやんなぁ」

「ちげぇよ!」

持ち直したなえちゃんも追いついてアツヤと小競り合いをしている。

「これで決めろアツヤ!」

「みんな!最後まで全力で走りきるんだ!!」

アツヤにボールが渡り、稲森が叫ぶ。

「必殺技熊殺し、斬!!」

アツヤの必殺技が放たれて、ゴールにたどり着く目前で稲森と小僧丸がゴール前に立ち塞がる。

「行くぞ小僧丸!」

ホッキョクグマ2号で、熊殺しに対抗する気か、と思ったがどうやら違うようだ。のりかちゃんを含まぬまま、2人はアツヤのシュートに向かって雄叫びを上げて走り出した。

そして、タイミングを合わせて、同じタイミングでボールを一緒に蹴り返した。

「「カウンタードライブ!!」」

「なんだと!?」

ゴールからゴールへの超ロングカウンターシュートで最後の得点を決めた。


逆転勝利
ピッピッピーッとホイッスルの音がけたたましく鳴り響いた。
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