フリースタイラーの変遷

□アレスの天秤編
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雷門対白恋の前半戦は0-1で終了した。

「白恋中はいいチーム連携だね」

野坂の言うように、白恋中は吹雪士郎を中心に上手く連携を取っている。
アツヤが若干個人プレー気味だが、それも兄である士郎が上手くコントロールしているように見えた。

逆に、雷門はDF陣の連携が上手くいかず、お見合いしてゴール前を空けてしまう。打ち込まれた染岡のシュートはなんとかのりかちゃんが弾いたが……、それでもお前の位置だろとか、言って口論になり、ピリついていた。

『雷門は指揮系統が弱いね』

「作戦はほぼあの監督が考えてるチームだろうし、今までもそれに乗せられてる感じはあったからね。自分達で、指示しても動く事に慣れていない」

『キャプテンの道成がまったくチームを指揮できてないのもあるけど……』

ハーフタイムのベンチを見れば、道成は万作と言い争いをしているようだ。

『彼はMFだから、それとは別にGKの、のりかちゃんか、DFのうちの誰かがちゃんと戦況見て指示出来ればなぁ…』

雷門側は以前からDFの連携が弱いのが目立つ。DFがピンチの時は、FWの稲森と小僧丸がゴール前まで戻るなんて事が結構あったはずだ。DFがDFとしての仕事が出来ていない。
今まではそれでもなんとか勝ててきたが、動きの素早く攻守共に得意な吹雪兄弟相手に、そんなことをしていては勝てないだろう。

『今の雷門のDF全員2年生なんだっけ…』

去年の雷門は、土門が入るまでDFは1年生の壁山と栗松、サッカー初心者の影野と風丸だったから、最初の頃はフィールド全体を見てる円堂が指示してたし、フットボールフロンティア後半の頃にはがっちり指揮できる鬼道が入り、風丸も役割を理解してDF仕切ってたしなぁ。

『DFに年長者がいればまた違ったんだろうけど…』

確か、キャプテンの道成とFWの剛陣だけ3年生であと全員2年生なんだっけ…。

「学年と言うよりは、お友達チーム、だからこその弊害かな」

『ああ…』

確かに。
王帝月ノ宮(うち)なんかはゴリゴリの実力があるものが上の縦社会だからね。
私とか花咲、丘野が3年生だろうが関係なしに、野坂の指示が絶対のチームだし。野坂と同じ2年生でも西蔭を筆頭に彼に従ってるし。



「さて、雷門はここからどう巻き返すのかな」

そう言ってどこか楽しそうに野坂は、雷門のベンチに座っている監督を見た。


後半戦も再開されるが、ハーフタイムで言い争いをしていたから問題解決はしてないようで、やっぱり懸念していた通りの事になった。
連携の取れないDFに変わりFWの稲森が下がってゴールを守る始末。
そこからシュートをうちにも上がるから、ゴールからゴールまでの役120mの距離を1人で何往復もしている。

『ガッツあるね…』

でも、スタミナ切れはどうしても起きる。
士郎からボールをカットした稲森は疲れてその場にダウンしてしまう。
それを心配して道成と万作、それに奥入が彼に駆け寄った。

「何をやってるんだ」

万作が聞けば、稲森は身体を起こして笑った。

「決まってるでしょ、サッカーだよ」

そう言って稲森はゆっくりと立ち上がった。

「サッカーは楽しいもんでしょ!ミスしたって、思い通りにならなくたって、それがみんなで向かっていくって事だろ!」

稲森にそう言われ、3人はハッとしていた。

『なんていうか、稲森は、

お日様みたいな子
円堂がキラキラ輝く太陽みたいな子だと思ってたけど、稲森はぽかぽか温かいお日様って感じ。
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