フリースタイラーの変遷

□世界への挑戦編
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イナズマジェットでライオコット島の本島の中心エントランスに到着した後は、古株さんの運転するイナズマキャラバンで観光がてら各エリア経由してジャパンエリアへ到着した。
ジャパンエリアは川を挟んだ西側は日本の街並みを再現した店舗エリアになっていて、東側に選手の為の宿舎と練習の為のサッカーコートが用意されていた。
宿舎の1階は食堂やお風呂場、談話室に監督用の執務室などがあって2階は一人一人の個室となっていた。

食堂で部屋割りを決めた後、明日の開会式についての説明が始まったので選手ではない私は失礼して、アルコール消毒液とか洗濯用の漂白剤だとか、飛行機で持ってこれ無かったものの買い物に店舗エリアに向かおうと玄関を出た所だった。

『ん?』

一瞬人影が見えた気がして首を傾げる。
まあ、観光さんとかが興味本意で覗いたんかなー、とか思ったのだが、玄関階段に不自然に置かれたフルーツ籠を見つけ、思い当たる節があってそれと手に取って慌てて外に駆け出した。

右と左どっちに行った?とキョロキョロ顔を動かすと、路地裏へと入っていく赤みがかった茶色のウェーブヘアが見えた。

『待って、夏未ちゃん』

追いかけて名前を呼べば、彼女は立ち止まって人差し指を口元に当てて振り返った。
逃げない所を見ると、静かにしていれば近づいても良さそうだ。

『久しぶりだね。元気だった?』

歩み寄りながらそう聞けば彼女は小さく笑った。

「ええ。貴女も元気そうね」

『あー、うん。元気元気』

色々問題はあるが元気なのは元気だ。

『コレ、あんなとこに置いてかないで、みんなに会ってけばよかったのに』

「あれは急に扉が開いたのに驚いて……」

ああ、フルーツ籠は宿舎の管理者にでも渡すつもりだったのに呼び出す前に扉が空いて選手かもと思って逃げたのか。
ちなみに、試合の間とか宿舎を空にする事になるから、ちゃんとサッカー協会から管理者を用意されている。

「それに、水津さんなら会えない理由は分かっているでしょう?」

『まあ、ね』

知ってはいるけど、それでも会えばみんな喜ぶのになぁ、とは思う。

『ミスターアラヤのサッカーは楽しい?』

「ええ、楽しいわ」

私の質問に夏未ちゃんはいい笑顔で返してくれた。

『それなら良かった!でも、そっかぁ……敵チームかぁ……』

「ええ。円堂くん達が相手でも手加減なんてしないから、しっかり鍛えておくことね」

『うん、頑張るね』

正直、今のレベルじゃリトルギガントには勝てないもんなぁ。
これからの特訓と試合での経験値がものをいうであろう。

「それじゃあ、私はそろそろ行くわね」

『ああ、引き止めてごめんね。それじゃあ、また』

見送ってから宿舎に戻ろうと手を振るが、夏未ちゃんは動かない。
夏未ちゃんの方がそろそろって言ったのに。

『夏未ちゃん?』

「……これを、」

夏未ちゃんは近づいてきて、黒いメッセージカードをフルーツ籠の中に入れた。

「円堂くんの部屋に置いておいてちょうだい」

おっと、これは追いかけて来て正解だった。
じゃないと何もメッセージのないフルーツを円堂の部屋に置くところだった。

『他の子にはバレないように、だね』

「ええ、お願いね」

それじゃあ、と今度こそ別れを告げて夏未ちゃんは路地の奥へと消えて行ったのだった。







『さてと、』

1度宿舎に戻って、皆にバレないように円堂の部屋にフルーツ籠を置いて、今度こそ買い物へと出発する。

店舗エリアに向かいライオコット島のガイドブック片手にどこにどんな店があるのか見て回っていると、曲がり角から飛び出てきた少年とぶつかった。

『ああ、すみません』

ガイドブックを見ながらだったからちゃんと前を見ていなかったと謝る。

「ああ、いや、こちらこそすみません」

少年はへらへらと笑って謝ったあと、それじゃあと立ち去ろうとした。

「フッ、随分と腑抜けだな」

その聞き覚えのある声に、えっ、と顔を上げれば、白いスーツを着た長い金髪でサングラスを掛けたおじさんが少年の後ろに立っていた。

『かげ……えっ!?』

現れた人物に驚いて入れば、少年が急に走っていき更に驚く。

「財布はいいのか」

おじさんの言葉に、えっ?と慌ててカバンを開ければ財布がない。

『嘘、スられた!?』

そうか、日本風の景色ですっかり油断してたが、ここは外国。そういうのもあるのか。

「今からでは追いつかんな」

まだまっすぐ走っていて目の届く範囲にいるが、裏路地にでも入られたらもう分からないだろう。
警察案件か、と諦めモードの私の目の前にどこから出したのかおじさんはサッカーボールを差し出した。

『え?』

「追いつけぬのならここから止めるしかあるまい」

サッカーボールで犯人を止める探偵物を知ってるからピンと来てしまった。

『当たれぇええええ』

こうなりゃヤケだとボールを蹴る。

「なっ、うわあ!」

ボールは見事スリの頭に命中しぶっ倒れた。
すまん。
けど、財布を盗んだお前が悪いし、


必殺技じゃ無かっただけありがたく思えよ
財布を取り返して、スリを警察に突き出してる間におじさんは姿を消していた。
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