フリースタイラーの変遷
□世界への挑戦編
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フィールド上の不動は相変わらずで、パーフェクトゾーンプレスで足を止められた時ですらパスを出さず、チームからの反感を強めていった。
そんな彼が再びボールを持つと、ファイアードラゴンのFWとMF総出で彼を取り囲んだ。
「味方に嫌われても敵には人気だな」
南雲がそう嫌味を言えば不動は口角を上げた。
「オレの力を認めた、ということだろ？」
上手く返した不動に、なんだと！と南雲は怒る。
「お前らとの遊びの時間は終わりだ！」
そう言って不動はボールを大きく蹴った。
「パス！？」
不動1人に5人も相手しているからサイドはがら空き。
不動はそこを狙ってボールをパスしたわけだが……、サイドから上がって来た風丸がボールに追いつくことなく、ボールはラインの外に出てしまった。
「しっかりしやがれ！」
「今更なにを……！しかもどこに蹴ってるんだ！」
言い合う不動と風丸の様子をベンチから見る鬼道と円堂は、先程私がした話も踏まえて、そろそろ分かってきたんじゃなかろうか。
ファイアードラゴンのスローインボールを不動が奪い、マークが着くや否や、不動は壁山へとパスを出した。
しかし、これも取れない。
「いい加減にしろよ！」
「あんなの追いつけないッスよ！」
それを見て、円堂と鬼道はベンチから立ち上がった。
「今のは！いつもの壁山なら追いついていた。たぶん、さっきの風丸も」
円堂の言葉に、うん、と鬼道も頷く。
その後も不動がヒロトにパスを出すが、ヒロトも追いつけない。
「なぜ取れない！馬鹿共が！」
不動が怒声を上げれば、壁山と風丸が寄ってくる。
「今のは取れるわけないっス」
「なんだと！？」
「イナズマジャパンはお前だけのチームじゃない！」
また言い争いをする彼らを見て、円堂がそうか！と声を上げた。
「不動は闇雲にパスを出していたわけじゃない。敵の動きも、味方の動きも分かったうえであんなパスを……！」
『そう。だから、不動からすれば、何故取れない！ってなってるんだよね。不動はちゃんとみんなの実力を信じてるから』
もう、分かってるよね？と鬼道を見れば、彼は品定めするようにフィールドの不動を見つめていた。
「でも、みんなが不動を信頼しないせいで……いつものプレーができないんだな？」
答えが合ってるか？と言うように円堂が私の方を見た。
正解と頷く視界の端で、アフロディのセンタリングでシュート体勢に移る、南雲と涼野姿が見えた。
「「ファイアブリザード！！」」
カオス戦でも見せた2人の必殺シュートがイナズマジャパンのゴール目掛けて飛んでくる。
「止めてやる！」
この試合中ずっと、息巻いている飛鷹が雄叫びを上げならがらボールの方へ走って行く。
しかし、タイミングが合わず彼がボールを止めるために足を振る前に通り過ぎ、シュートはそのままの威力でゴールへ向かった。
「ムゲン･ザ･ハンド！……あっ！」
立向居が必殺技で応戦するも押さえ込み切れず手の中からボールが飛び出した。
その瞬間、小暮と栗松が立向居の後ろに周り体を張ったディフェンスで何とかボールをゴールを守りライン外へ弾き返した。
小柄な2人がよく防いだものだ。
「クソッ！これ以上かっこ悪い所は見せられねぇ……！鈴目たちのためにも……！」
「飛鷹……」
円堂はやっと気づいたらしい。
チームを見るってことに。
チェ・チャンスウのコーナーキックを取ろうとキム・ウンヨンと競って高く飛んだ飛鷹だったが、これもから回ってしまう。
飛鷹がスカって、余裕を持ったキム・ウンヨンがゴールへヘディングでシュートしたが、何とかこれは立向居がキャッチした。
反撃と、立向居から壁山に、壁山から風丸へとパスが繋がる。
ライトを上がる風丸の左サイドをヒロトが走っていて、そこに中央から不動が上がってきた。
「ヒロト！」
風丸はわざわざ距離のあるヒロトへとロングパスを出した。
距離があると言うことはボールが着くまでに敵も追いついて来れるということだ。
ヒロトが受け取った頃には、正面から2人のDFが迫ってきた。
「豪炎寺くん、虎丸くん！」
素早い判断でヒロトは虎丸へとパスを回した。
「豪炎寺さん！今度こそアレを決めましょう！」
虎丸が先を走る豪炎寺にそう叫び、豪炎寺は目配せで返事をした。
「タイガー！！」
「ストーム！」
虎丸がタイガードライブを打ち、そのボールを豪炎寺が爆熱ストームでブーストする。
しかし、放たれたシュートはゴールポストの遙か上を通り過ぎてしまう。
《おーっと！またもゴールならず！》
「豪炎寺さん、前よりもっとタイミングがズレてますよ！？本当にどうしたんです！？」
「すまない……」
「豪炎寺さん……？」
虎丸に謝り、戻っていく豪炎寺を円堂はじっと見つめる。
いつもの豪炎寺なら、不動があの態度でも彼の考えを読み取り行動で皆に示す事も出来ただろうが、気の漫ろな今の豪炎寺では自分の事でいっぱいで、それどころでない。
『円堂。今のイナズマジャパンはどう見える？』
「……みんな焦ってる。全員がちぐはぐで、どう動いたらいいのか分からないんだ」
『そうだね。じゃあ、今みんなに必要なもの、分かったかな』
「ああ」
円堂はペチッと自分の頬を叩いた後、立ち上がって久遠さんの元へ駆けて行った。
立ち上がれキャプテン
さあ、答え合わせといこうか。