フリースタイラーの変遷

□世界への挑戦編
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『もしもし』

《お久しぶりね。水津さん》

電話の向こうから聞こえた声は、優しい声色した女性のもの。

『ええ。久しぶりです、瞳子さん。色々大変なのに、私のことまですみません』

そう伝えれば、電話の向こうにいる吉良瞳子は、ふっ、と小さく笑った。

《いいのよ。ヒロトの頼みだし、なにより貴女も父さんの被害者なのだし》

『いやいや、吉良会長自身は私に何もしてないですよ』

その配下の研崎と、彼がなぜだか盲信していたらしい神代なる者が問題だったのであって。

《ヒロトから話を聞いた時は驚いたけれど、今の容態はどうなの?》

『あれからはあまり変わりないですね』

《そう。貴女は既に知ってるでしょうけど、近々そっちに行くから、その時に検査用に毛髪を少し分けてもらえるかしら》

『あー、』

ネオジャパンとの試合か!

『はい、わかりました』

《それとサプライズを用意しているから、楽しみにしていて》

『はい?』

サプライズ?……ネオジャパンの事だよね??

《それじゃあ、また》

そう瞳子さんとやり取りをした、数日後。


「今日は、2チームに別れて練習試合を行う」

グラウンドで、いいな?と聞く久遠さんの周りに集まったイナズマジャパンの面々は、はい!と元気よく返事をした。

「実践形式の練習かぁ。楽しみやな!」

ピッチの外で見守っていたマネージャー達の横から関西訛りの声がして、えっ、と振り向けば、腕組みしてグラウンドを眺めるリカちゃんがいた。

「なんでアナタがいるんですか!?」

真隣にいる目金が驚いてそう言えば、リカちゃんは、よっ!と気さくに片手をあげた。

「大阪に帰ったんじゃなかったの?」

「帰ろうと思ってんけどなー。また決勝戦見にくんのめんどいし、塔子んち泊めてもらうことにしてん」

秋ちゃんの質問にリカちゃんは、なははと笑って答える。

「おかげでこっちは寝不足だよ」

そう言ってリカちゃんの後ろから、ヌルッと塔子ちゃんが現れた。

「次から次にギャグ言って、笑うまで寝かせてくれないんだぜ……」

塔子ちゃんの目の下は黒く隈が出来ていた。

「そ、そうなんだ」

『それは災難だったね…』

皆が哀れみの目で塔子ちゃんを見る。

「そうなんだよ……。てか、久しぶりだな、梅雨に会うの」

「せや!前回来た時は秋たちしかおらんかってんよな」

あー、と間延びした声を上げながら首の後ろに右手を置く。

『久遠さん命令でお休み頂いたからね』

「ん?アンタ、それどないしてん?」

怪訝な顔したリカちゃんが、私の手首を指さして、一瞬ドキリとした。

『それって……』

まさかまた透けてるんじゃないか、と恐る恐る横手目でみたが透けている様子はない。

「そのミサンガやミサンガ!前はそんなんしとらんやったやろ?」

……目敏なあ。

リカちゃんの指摘を聞いて、塔子ちゃんがそういえばと呟いている。

「それ、アンタの趣味ちゃうやろ?……男か!」

キラキラとした目でリカちゃんが詰め寄ってきた。

『…こっわ』

なんで分かるん?

「日本代表カラーって事はこん中やな?だれや!」

そう言ってリカちゃんが、じーっとグラウンド内の選手たちに視線を移した瞬間、サッカーボールがグラウンドの外から飛んできた。

「なんだ!?」

慌てて円堂がそのボールをキャッチすると、

「流石は円堂。素晴らしい反応だ」

と称賛の声と共に白い長袖のキーパーユニフォームを来た黒髪で赤目の少年が現れた。

見覚えのあるその顔に、円堂は丸い目を更にくりくりとさせた後、笑みを浮かべた。

「デザーム!」

他の選手たちも気づき、特にデザームと同じエイリア学園だったヒロトと緑川は驚きの表情を浮かべていた。

「デザーム?今の私は砂木沼治。チーム、ネオジャパンのキャプテンだ」

「ネオジャパン?」

円堂の問に答えるかのように、砂木沼の横に15人の選手達が並ぶ。

帝国学園の源田、成神、寺門。
尾刈斗中の幽谷。
御影専農の下鶴。
戦国伊賀島の霧隠。
千羽山中の牧谷。
木戸川清修の武方努。
世宇子中のヘラ、デメテル。
イプシロンのゼル。
真・帝国学園の郷院。
プロミネンスのヒート。
ジェネシスのウィーズ、ゾーハン。

戦った事のある面々や、チームメイトだった者達に皆驚きを隠せないでいた。
そんな中、

「久しぶりね円堂くん」

と凛とした声がグラウンドに響いた。

「えっ、瞳子監督!?」

身体の大きい郷院の後ろから現れた瞳子さんに、イナズマキャラバンに乗っていた面々は円堂を筆頭に、ええ〜!?と大きな声を上げる。

「久遠監督ですね。こうして対面するのは初めてですね。吉良瞳子です」

「ああ。先の件では君の意見を参考させてもらった」

そう言って、久遠さんは一瞬だけ私の方を見た。
そういえば、初めて久遠さんに会った時に、トレーナーとしての能力を瞳子さんから聞いたとかなんとか言ってたな……。
そうか、私のせいで完全初対面じゃなくなってるのか。変な感じだ。

「ええ。正解だったでしょう?」

どこか得意げに瞳子さんはそう返す。私の目に狂いはないのよと言いたげだ。
要するに、私が褒められてるよねコレ。えっ、ちょっと嬉しい。

「ですが、私の方がもっと上手く使えます」

「ほう?」

ん?

「私はネオジャパンの監督として、水津さんをネオジャパンの選手としてスカウトしに来ました」

『はい!?』

瞳子さんのとんでも発言に、思わず大きな声で聞き返す。
他のみんなも目をぱちくりとさせている。

「言ったじゃない。サプライズがあると」

いや、言ってたけど……!言ってたけど!!

思ってたんと違う!
なんでと聞けば相も変わらず、勝つためよ、と返されたのだった。
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