フリースタイラーの変遷

□世界への挑戦編
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本日はカタール戦。
試合前にフットボールフロンティアスタジアムのロッカールームでみんなのコンディションをチェックする。

『体調悪い子とか、昨日眠れなかった子いない?』

そう尋ねたが、具合が悪いと手を上げる子はいない。

『よし。鬼道、足はもう万全?』

マントの紐を結び直している彼の足を見る。
ここ数日の練習で、ちゃんと回復しているといいが……。

「ああ、大丈夫だ。100%のパフォーマンスができる」

『おけーおけー』

みんな問題はなさそうだけど……不安なのは緑川。
見た感じ疲れた様子はないけれど、言った通り練習を控えてくれたんだろうか?
私が見ていた限りでは、練習超過は無かったけれど、私が見ていない所で隠れてやってたら分からないし……。

「水津トレーナー大丈夫ですか?怖い顔してますよ」

声の方に視線を向ければ、虎丸が心配そうな顔をしてた。

『え?そんな怖い顔してる?』

そう言いながらむにむにと自分のほっぺをつまむ。

「はい。さっきはしてました。考え事ですか?」

『あー、うん。ちょっとね』

そうぼかしたあと、ところで、と話題を切り替える。

『虎丸は、練習とお家の事の掛け持ちで疲れてない?』

「全然疲れてないです!」

『本当?個人メニュー結構キツめだったから大丈夫かなって思ったんだけど』

「へへっ、オレ結構体力あるんですよ」

そう言って、虎丸は鼻の下を人差し指で擦った。

『そっか。じゃあ今日の試合も全力で頑張るんだよ』

よしよし、と短く切られた虎丸の髪を撫でる。

「わ、水津トレーナー、子供扱いはやめてください!」

子供がなに言ってんの、と手から逃げた虎丸を見た。
最近は鬼道も大人しく撫でられるようになったからこの反応は久々だなぁ。
さてと。

『さ、今日は気温が高くなるらしいし、しっかり水分補給するんだよー!』

そう声をかけて選手たちがウォーミングアップの為ロッカールームを出るのを見送った。






カタール代表デザートライオンとの試合。
ラフプレーの多い彼らを相手に、イナズマジャパンは、風丸がコーナーからのバナナシュートで先制点を決め、その後も緑川が繋いだボールをヒロトが流星ブレードで得点し、前半戦を2-0で終えた。

「みんないい感じよ」

秋ちゃんがそう声をかけながら戻ってきた円堂にタオルを渡す。

「おう!後半もこの感じで行こうぜ!」

「あ、ああ……」

タオルを受け取って円堂がみんなを振り返って見れば、幾人かは地面に座り込み、何人もがハアハアと荒く息をしていた。

『みんな、深呼吸!』

え?と幾人が首を傾げる中、豪炎寺と鬼道はすぐさま大きく深呼吸をした。
それを見てみんなも真似して深呼吸をした。

『よし、落ち着いたね?それじゃあ、しっかり汗を拭いて水分補給なさい』

そう言えば春奈ちゃんと冬花ちゃんが用意したドリンクをみんなに配っていった。


デザートライオンはラフプレーも多いがなにより、とにかく彼らはフィールドの全体を使って走り回っていて、それにつられてイナズマジャパンの皆も走り回っていたし、なにより今日のこのお天気だ。
久遠監督も気にしてか、空を見上げている。

体力の消耗がいつもより激しいはず。少しでも休めれば、と思うが、あっという間にハーフタイムは終わり、皆、フィールドへと戻っていく。


後半戦、デザートライオンは布陣を変え、FW3人という攻めの構成。
デザートライオンのキックオフで、駆け上がってきた青いバンダナの選手ザック相手に、鬼道がすぐさま緑川に指揮しチェックを促す。

「任せておけ!」

そう言って走る緑川は、私が気にしていたほど異様には疲れていないようで、ザックの元へすぐさま駆け寄った。
しかし、ザックは向かってきた緑川にそのまま体当たりするかのようにドリブルでボールを運び、彼を突き飛ばした。

「うわぁっ!!」

「緑川!」

「詰めろ!土方、木暮!」

ゴールへ向かうザックを止めるため指示を出す鬼道の声を聞きながら、突き飛ばされ後ろに倒れた緑川が心配でそのまま見つめていれば、彼が直ぐに起き上がったので、ほっと息を吐いた。
だが、息を吐くのもつかの間で、詰め寄った土方と木暮を揚々と抜かしたザックはその後立ちはだかった壁山も簡単に抜き去りゴールへとシュートを放った。

「正義の鉄拳!」

円堂がパンチングでボールを弾き返しゴールを死守し、跳ね返ったボールは風丸が駆けて追いつき体制を立て直すため、デザートライオンの選手たちに取られる前に、ラインの外へと蹴り飛ばした。

仕切り直しで、デザートライオンのスローインが行われる。
8番セイドが両手で投げたボールをザックが受け取り彼は直ぐに11番マジディへとパスを出した。
本来なら、先程のプレーで緑川が倒れ、彼に変わって投入される栗松がここでボールをカットするのだが……、彼が入っていない今、パスは通りマジディはそのままゴールへ向かって走り出した。
それをイナズマジャパンは追いかけるが、前半での消耗が激しく追いつけないどころか、デザートライオンのDFであるはずのビヨン・カイルが仲間に追いつきマジディからパスを受け取り、更にそこからザックへと繋げた。

「行かせない!」

意地で追いついたヒロトを前にボールを持ったザックはタックルをかまして押し退け、そのままザックにセンタリングを上げた。
よし!と返事をしてザックは中へ飛んだ。

「させるか!」

マジディがヘディングでシュートを決めようとしたところに綱海が飛び上がり額でボールを押し返えそうとする。

「ぐっ、」
「うおおおおおお!」

マジディが雄叫びを上げながら綱海を押し切った。

「何っ!?」

綱海はボールと共に背中から下へと落ちていく。それをキャッチしようと円堂が手を伸ばさすのを見て、恐怖心から思わず両手で口を塞ぐ。
やはり円堂が受け止めることは出来ず、2人してボールと共にゴールへ叩きつけられた。

「いてて、なんて攻撃だ………って、綱海?綱海!!」

起き上がった円堂が倒れたままの綱海に呼びかけている。

『監督!』

早く選手交代をと叫ぶ。

熱砂の地を這う
倒れた綱海を運び出す仲間、デザートライオンのキャプテン、カイルは砂漠に迷い込んだ旅人同然と、疲れきったイナズマジャパンを見下し嗤うのだった。
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